長編 | ナノ


 二人の微妙な会話に混ざっていると、突然、院内に非常警報が鳴り響いた。私たちは同時に立ち上がり目を見合わせる。

「牧野さんはあちら側を。私はなまえさんと一緒に反対側を探します」

宮田さんは口早にそう指示すると、すぐに扉を開け部屋を出た。私もあわてて部屋を出て追いかけるが、宮田さんは既に遠いところを走っていた。だんだんと小さくなる背中を見ていると、彼がどこか遠い、私の手の届かない場所に行ってしまうような気がして、怖くなった。

「宮田、さん」

必死に走っているのに、追い付けない。このまま彼がいなくなったら……。そう思うと、心臓が握り締められているのではないかと思うくらい苦しくなった。





「なまえさん」

 何度も見失い、それでも勘を頼りに走っていると、ある一室の前で立っている宮田さんを見つけた。

「よ、かった……」

膝に手をつき肩で呼吸しながら言うと、宮田さんが首をかしげた。

「震えているのか」

「……え?」

予想外の言葉に目を見開く。震えてなんか。そう言いたかったのに、言葉が詰まった。私、震えてる。なんで……? 宮田さんがどこかへ行ってしまうと思ったから? ……違う。答えはもっと根本的な、簡単なものだ。



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