長編 | ナノ


「っ!」

 私は元のベッドで目を覚ました。頭が痛い。今の夢、なに……。屍人ノ巣ってどこ? 美耶子って誰? 儀式ってなに? 堕辰子ってなんなの? 八尾さんはなにをしようとしてたの? 水鏡だとか祭壇だとか、楽園の門だとか……。わからない。わからないわからない。

「起きたか」

 はっとして声の方を向くと、宮田さん、そして牧野さんがいた。

「牧野さん……。無事だったんですね」

私が上体を起こしながら言うと、牧野さんは戸惑ったように
「え、えぇ……」
と言った。私はよかった、と胸を撫で下ろしたが、彼の代わりに一人いなくなっているのに気付き、また不安になった。

「理沙さんは……?」

「探索に行った」

「そうですか……」

恋敵の妹とは言え、やはり心配だ。大丈夫だろうか。

「……あ。そういえば」

 私は宮田さんに白衣を借りたままなのを思い出し、それを持って宮田さんの傍まで行った。

「ありがとうございました」

「あぁ」

白衣を受け取り羽織る宮田さん。宮田さんと一緒にいると、映像のことや夢のことを一時的にでも忘れられる。
いつまでも、こうしていたい。

120403



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