小説 | ナノ


 テーブルの上に広げられた巨大なゲーム盤。その上に並べられる色とりどりの駒。最近のお気に入りは、十七マス目の名前ちゃん。大富豪の家に産まれ先ほど女優デビュー。お金なんか一生遊んで暮らしても使いきれないほどある。

「とっても素敵な人生だね」

向かいの椅子に座る彼女にそう言うと、彼女はふふ、と愛らしく笑った。

「幸せよ、怖いくらいに」

「ま、十二マス目にあんなことがあれば、怖いよね」

今度はオレが笑った。あの時、彼女は同級生を衝動的に刺し殺した。しかし罪には問われなかった。怒られもしなかった。親が金を積み上げ事件を無かったことになったから。彼女は青ざめた顔をして震えているかと思ったが、予想に反して彼女は笑んだまま、可愛らしく小首を傾げたのだ。

「あら、なんのことでしょう?」

顔色一つ変えず、彼女は確かにそう言った。根性腐ってるな、と思った。

「君、やっぱり早くこっちおいで」

オレはここには居もしない彼女にそう言って、賽子を振った。それは三回転して、4つの窪んだ黒を見せた。彼女の駒をマスに沿って動かす。1、2、3、4……5、6、7、8、9。

「事故に遇いリタイア」


 彼女は元同級生の親に轢き殺された。行き着いた先はもちろん地獄。
オレだってたまには良いことしないとね。


↑人生ゲーム↓
song by 初音ミク
120107
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