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※弱いプリキュアヒロインが悪堕ち

 夜道をひとりで歩いていると、後ろからこつこつと何者かの足音が聞こえてきた。妙な胸騒ぎがして立ち止まると、ぴたりと足音も止まった。不審に思い振り返るが、誰もいない。気味が悪い……、早く帰ろう、そう思った瞬間。

「こーんばんはあー」

突然耳元から声が聞こえ、反射的に悲鳴をあげそうになる。が、私が声を発するより早く、声の主、ジョーカーが私の口を塞いだ。

「叫ばないでくださいよ」

「ふっ、ぅー!」

腰に手を回されて逃げることができない。それでも何とか逃れようと必死に暴れるが、ジョーカーはびくともしない。なんでこんなところにジョーカーが……! それにいまはひとり。万が一にも勝ち目はない。

「今日はあなたにお願いがあって参りました」

「……?」

驚いて動きが止まった私を見て、ジョーカーはにやりと笑った。

「あなたに私達の仲間になっていただきたいのです」

「!? ん、んー!」

「ああ、これでは返事が出来ませんね」

ジョーカーはようやく口を塞いでいた手を離した。私は大きく息を吸い込んで叫んでやろうかと思ったが、ここには民家もなければ人気もない。それに相手はただの悪漢ではない。無駄だ。近道だからってこんな道通るんじゃなかった。

「さて……、仲間になっていただけますか?」

「なるわけないでしょう」

きっと睨みつけると、ジョーカーは私を嘲るかのように声をあげて笑った。そしてずいと私に顔を近づけた。思わず小さな悲鳴が漏れた。

「あなた、悩んでいましたよねえ……? 自分なんかがプリキュアでいいのかって」

ぞわりと悪寒が走る。その先は、……聞きたくない……! しかしそんな願いも虚しく、ジョーカーは私の耳元に口を寄せると、そっと囁いた。

「いいわけがないでしょう?」

「っ……。わ、私は!」

「自分なりに頑張ってる? 自分なりに頑張ってたら他人に迷惑をかけていいんですかあ? 例え仲間が傷ついても?」

「それは……」

「あなたは戦わず、ずぅっと後ろで見てましたね。傷付きたくない、その一心で。仲間が傷付きボロボロになったって。最後にきっと誰かが倒してくれる、と!」

「違う……。私、私は……」

ぼたりと大粒の涙が頬を伝った。なにが違う、だ。ジョーカーの言う通りだ。こんな私が、プリキュアでいていいはずがない……。
 ジョーカーが嬉しそうに笑った。そして私の涙をぺろりと舐めると、そっと私を抱き寄せた。

「大丈夫です。私のところへ来れば、もう悩むことなんかありません」

「私……」

私の頭を優しく撫でるジョーカーの服を掴み、私は言葉を続けた。

「仲間に……、仲間になる」

ジョーカーの笑い声がふたりだけの空間に響いた。


120129
ヒロインは最初からバッドエンド空間にいました(気づいていない)
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