小説 | ナノ

※破廉恥・捏造

 私が幼かった頃、とても仲の良い男の子がいた。しかし両親のいなかった彼は、ある日生贄にされることが決まった。

「や、やだ。丁が、死んじゃ、う、なんて……」

「仕方のないことなのです」

泣きじゃくる私の頭を小さな手で撫でながら、彼は少し寂しげに言った。

「でも、で、も……!」

「仕方のない、ことなのです」

「わ、私、絶対、助けるから。だから、待ってて」

同じことを繰り返す彼に、私はそんなことを言った。彼は小さく笑った。


 しかしどうすればいいか、なんてわからなかった。だが私はとにかく丁に死んでほしくなくて、その晩父に
「丁を殺さないで」
と、詰め寄った。村の長である父は激昂し、私に平手打ちした。お前はこの村のみんなが死んでもいいのか、と。


 そして丁が生贄に捧げられる日。私は、私がなにかしでかすのでは、と危惧した父に全身を縄で拘束され、家の奥に吊されていた。縄をほどこうと奮闘するが、体力が削られるばかりで状況は何一つ変わらなかった。そうこうしている内に時間は経ち、ついに父が帰ってきた。父は私の拘束をとくと、何事もなかったかのように
「さあ、ご飯にしよう」
と言った。


 そして私は成長し、村の男を婿に迎えることになった。しかし婚儀の前日、私は死んだ。
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