小説 | ナノ

 今日も彼は窮屈な花壇に植えられたクチナシに水をやっていた。私は花壇のそばにしゃがんでその様子を眺めていた。

「気持ち悪い色……」

ふと思ったことをぼそりを呟いてみる。すると彼は空になったじょうろで私を殴った。

「綺麗な色じゃないか」

「どこが? まるで枯死したみたいな色じゃない」

口を尖らせながら言うと、彼はわざとらしく溜め息をついた。

「それが綺麗なんだ」

「悪趣味」

そう言うと、また殴られそうになったので今度はひらりと避けた。そして私は素手で豪快に花壇を掘り返し始めた。

「あ、おい!」

「暴力も、演説も、親父ギャグも……やめた方がいいよ」

 土の中には、私がいた。クチナシの根がたくさん絡み付き、その上白骨になっているが、確かにこれは私だ。

「そろそろ出してよ」

言って彼を見上げたが、彼はいつものように気味悪く笑うだけだった。

120506 いつか連載にしたい
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