※カニバリズム
ヒロイン死
「せーんせ」
私の病室にやって来た宮田先生を、ベッドに押し倒した。先生は一瞬戸惑ったような顔をしたあと、退けようと私の肩を押した。しかし私は先生の白衣を力一杯握り首を横に振った。
「おい、悪ふざけは」
「聞いて」
そう言うと先生は面倒くさそうに溜め息をつきながらも「なんだ」と言ってくれた。
「私宮田先生が好きなの。だから先生の恋人が憎くてたまらない。先生の前で殺してやろうかとも思った。でもそんなことしちゃ先生に嫌われる。先生を監禁しようかとも考えた。けどそんなことしても愛されない。私、先生に愛されたいの。先生を手に入れたいの。なのに、どうしていいかわからない。求導師様も答えを知らない。それで私、考えに考えて……ついに思いついたの。わかる?」
先生の眉間に皺が寄った。やっぱり先生も思いつかないのかな。ちょっと優越感。
「それはね……先生になること」
ハッと目を見開いた先生の耳元で、私はささやいた。
「お願い、私を食べて」
そう言った瞬間、視界が反転して、今度は私がベッドに押し倒されていた。間髪入れずに首に先生の手が回る。まだ力は入っていない。
「本当にいいのか?」
「うん、いーよ」
「そうか」
ぐっと先生の手に力が入り、首が絞まる。私は無意識のうちにシーツを握り締めていた。
「あ、ぁ……せん、せ」
時間が経つにつれ、心臓の音が大きくなる。ドクン、ドクン。室内に鳴り響く、唯一の音。
「あ……い……し、て」
視界にノイズもちらついてきて、ついに私は意識を失った。先生は、ずっと無表情だった。
後日私はビーフシチューの具になり、そして、先生になった。
120324