※注意
聖也さんの好きな人。それは、真が強くてどこか抜けている笑顔のかわいい女の子。彼女はカジノで働く紅一点で、とても聖也さんに可愛がられている。つい先日から聖也さんと付き合い出したらしい。
学生時代から聖也さんを見ていた私を差し置いて。私の方が彼を想っているのに私の方が綺麗なのに私の方が偉いのに私の方が彼を支えてあげれるのに私の方が彼を大切にしてあげられるのに
「それなのにどうしてアンタなのよぉおおぉおお!」
ズブリと彼女の腹にナイフを突き刺すと、まるでスポンジみたいに簡単に入った。耳をツン裂く彼女の悲鳴。それは私の心を躍らせるものでしかなく、私はナイフを引き抜き、また突き刺すという事を繰り返した。
「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! お前なんかが聖也さんの隣に居て言い訳がない! 死ね、この糞女!」
気が付けば彼女はもう人の形を留めてはいなかった。私はナイフをその辺に投げ、くるりと振り返った。
「聖也さん」
猿轡をし、手足をロープで縛られ床に転がっている聖也さんは、満身創痍の状態で泣いていた。その涙はこれからの生活に対する希望なのか、これまでの生活に対する決別の証なのか。私には解らないけれど、今はそんなのどうだっていい。
「これからずっと、一生、永遠に、一緒なんですから。ね」
部屋に響く大哄笑の声。
彼女が一度私に「あなたは可笑しい」と言ったことがある。勝った人が正しい世の中なのだから、結果的に可笑しかったのは彼女。愛は勝つのよ、お馬鹿さん。
120127
TITLE:ゆえに