小説 | ナノ
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みんな、笑ってる。この非常事態に、笑ってる。その様子を、私は屋上のフェンスを越えて見ていた。
「見て、閻魔。みんな笑ってるよ」
私も笑いながら閻魔を振り返った。自称地獄の大王様は、弱々しく自虐的な笑みを浮かべている。私はこの笑顔が大嫌いだ。
「私の友だちも、好きな人も、嫌いな先生も、笑ってるよ」
私たちの間を北風が通り抜ける。どこかで黄色い悲鳴があがる。冗談混じりの怒鳴り声が聞こえる。嗚呼、みんな楽しそう。嬉しそう。
「ねえ。三分後も、笑ってると思う?」
私は小首を傾げて閻魔に問うた。閻魔は張り付いた上唇と下唇を無理に剥がして、ゆっくりと答えた。
「死んでる、だろうね……」
そうか、何を思う間もなく死ぬのか。それは、面白くない。あ、そうだ。家族はどう思うかな? 世間は? 警察は? 閻魔は?
「残り二分。ねえ、裁きを下す閻魔大王様に聞くけど、」
私は、閻魔大王様、を強調して言った。閻魔は緊張した面持ちで私を真っ直ぐに見据えた。
「私はどうなるの?」
きっと私も爆発に巻き込まれて死ぬ。だってこの学校を吹き飛ばすには充分過ぎる程の爆弾を設置したんだもの。死ななきゃ人間じゃないわ。
「なまえちゃんは……」
閻魔が目を背けた。残念。私、天国へは行けないのね。
私は知りたいだけなのに。私はみんなを殺したいんじゃない。私自身死にたくない。長生きしたいし、好きな人や友だちといつまでも笑っていたい。でも、それを棄ててでも知りたいものがあるの。世界を動かしてみたいの。それだけなの。
「それでも、オレはなまえちゃんが」
はい、ゲームオーバー。時間切れ
「さよーなら」
続きは裁きの間で
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