小説 | ナノ
TITLE:鍵は花鉢の下
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あの日のダイゴは妙に優しくて、だから、私は気が付いていた。わからないふりを、しただけで。
「昨日はハロウィンだったね」
「お陰様で、たくさんお菓子を貰えた」
ソファーの上で後ろからダイゴに抱き締められながら、テーブルの上にあるお菓子の入ったかごを指差した。
「言ってくれれば僕だってあげたのに」
拗ねたような声音で言うダイゴ。私はそうだね、と適当に返事をしながらかごから飴玉を取り出してぱくりと口に含んだ。甘い。
「美味しそう」
「あげない」
「ケチ」
ダイゴは何度も私の頬をつついた。なんとなくだけど、絶対にあげたくなかった。私はごくりと飴玉を飲み込んで無理矢理ダイゴの方を向いた。
「飲み込んだ」
「……いいよ、別に」
そう言って私にキスをした。味わうように口内を舐め、それから私を押し倒した。
目が覚めると、横にダイゴはいなかった。代わりにあるのは一通の手紙と鍵。また旅に出たらしい。私は手紙をポケットに捩じ込んで、家から出て鍵を閉めた。鍵は花鉢の下。
あの日はちょうど三ヶ月前。私は花鉢の下の鍵をごくり飲み込んだ。
title:すなお
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