小説 | ナノ
TITLE:腐った海に還る
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この世で一番と言っても過言では無いくらい臨也さんのことが嫌いだった。私のこと馬鹿にするし、うざいし、私を好きになってくれないし。
「私。あと24時間以内に好きな人にキスしてもらえないと、死ぬんです」
海の魔女と約束したから。
最初こそは自信満々だった。海で最も美しいと称される美貌を持っていたから。でもだめだった。彼は「人」が好きだから。
「勝手に死ねばいい」
彼は「魚」には興味が無いらしい。一応半分は人なんだけど、と言うと、彼に、人もどきの間違いでしょ、と言い返された事がある。
「じゃあ一緒に死んでくれますか」
途端彼は噴き出した。まさか、冗談だろ、と。どうやら死ぬ気は無いらしい。「首」は好きで「魚」は嫌いだなんて、ずいぶんな偏食家だ。一度くらい我慢して食べてよ。
「君はインスタント食品みたいで嫌いだ」
彼はだらしなくイスに座ったまま、テーブルの上のインスタントラーメンを私に向かってゆっくり投げた。せっかく私のをわけてあげたのに。
「私はあなたが好きなんです」
ポン、とインスタントラーメンを受け取りちらりと消費期限を見た。そしてそれをなぞりながら、口を開いた。
「私、半分は人です」
「だから、」
グッ、と手に力を込めてそれを投げた。パコン、と臨也さんの顔面にクリーンヒットした。
「魚でもありますが、インスタント食品ではないです」
顔をおさえて俯いている臨也さんにずかずか大股で近づいて、襟首を引っ張った。
「そもそも食品ではないです」
彼の唇に自分のそれを押し付けた。
馬鹿なことを言ったと後悔した。
title:すなお
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