小説 | ナノ

 TITLE:なんて夢を見た
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 伊作先輩に頼まれ保健室で待機中。誰も来ないなー、なんて思った矢先に障子がひかれる。

「いらっしゃー、ってなんだ久々知か」

ガッカリ、と付け足すと、軽くチョップされた。嘘だよ久々知くん。本当はとっても嬉しいよ、と今度は心の中で付け足しておく。

「はいはいすいません。どうしたんですかー」

「豆腐の角で指を切った」

そう言って久々知は私の目の前に右の人差し指を出してきた。確かに切れてる。切れてる、けど

「意味がわからない」

なに豆腐の角で指切ったって。ギャグ?

「俺もわからない」

眉間に皺を寄せて言う久々知に、私は首を傾げた。どんだけ固い豆腐を食べようとしたの。そもそもどんな豆腐よ。なんてバカなこと考えても仕方ないか。

「とりあえず手当てしなきゃ」

救急箱を持ってきて中からガーゼと消毒液と包帯を取り出す。

「慣れてるな」

丁寧に消毒して、包帯を巻いていると久々知がぼそりと呟いた。なんだか、照れるな。あれ、もしかしていま良い雰囲気なのかも。手当てが終わったら告白しようかな、なんて。

「昨日、告白された」

「え……?」

 久々知がまた呟いた。驚いて顔を上げると、近距離に久々知の真面目な顔があって、心臓が飛び跳ねた。

「好きなやつがいるから……断った」

「そ、そうなんだ」

ごくりと生唾を飲み込んだ。久々知、好きな人いたんだ。意外。

「そいつすごい鈍感で、どんだけアプローチしても気付かないんだ」

顔を少し赤らめて話す久々知。止めてよ。そんな思いとは裏腹に、もしかして私? なんて思ってしまう自分がいた。本当嫌な性格してるな、自分。

「でもそこがかわいくて、もどかしい。今日だってそいつが保健室にいるっていうから来たのに」

まさか、本当に

「なまえ。お前だ」

久々知はふわりと笑って、私を抱き締めた。結びそびれた包帯がはらりと床に落ちていった。

「好きだ」


 そこで私は目が醒めた。

- 14 -

[*←] [→#]
×