TITLE:子宮の中でこんにちは
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暖かくて仄明るいところで私達は出会った。××と私は向かい合ってどこかに落ちていて、手を伸ばせば届く距離にいた。
「あなた、だあれ?」
口からごぼごぼと気泡が出た。だけど全然苦しくない。むしろ逆。とても気持ちがいい。
「僕は××。君は?」
彼が名前を言った瞬間だけ、辺りの音がすべて消えた。だけど気にしない。私は彼の名前を知ってるから。
「わたしはなまえ」
きっと彼にも私の名前が聞こえていない。だけどきっと彼も気にしない。だって私達は
「ぼくら全然似てないね」
「にてないね。まったくにてない」
二卵性双生児だからだよ。知ってるけど、言わない。
「喜八郎」
私は喜八郎の頭の横に手をついた。足は彼の体を跨いで置いておく。
「だめだよ、双子でこんなこと」
私達は家の廊下にいた。もう子宮にはいない。ないから。
「思ってないくせに」
世界はぐるりと反転して、今度は私が押し倒されていた。
「うん、思ってない」
ほらね。
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