小説 | ナノ

 TITLE:星空の下でさようなら
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※死ネタ

 目が痛くなるような満天の星空の下の原っぱで、私達は手を繋いで寝転がった。

「あ! 見て、北斗七星」

 私は自分が唯一わかる星座を指差して叫んだ。すると、三郎は調子を合わせるようにして少し笑う。

「すごいすごい」

「本当に思ってる?」

「思ってるよ。なまえにもわかる星座があるんだ、すごいなあって」

「し、失礼な! でも言い返せない、悔しい!」

とは言っても本当に怒りはしない。だってこんなに星がきれいなのに、怒るなんてもったいないよね。それに、この景色は彼が最期に見た風景。しっかり目に焼き付けておかきゃ。

「お願いが、あるんだ」

 突然、三郎がポツリと呟いた。
「なに?」と返すと、三郎が手を握る力を強めた。

「私を忘れないでほしい」

それを聞いた途端、心臓が大きく跳ねた。目頭が熱くなって、鼻の奥がツンとして。気が付いたら、泣いていた。

「わ、忘れない! ぜ、たい、忘れな、いよ!」

だって私が初めて好きになった人だから。好きだったのに、助けられなかったから。あのとき知らせを聞いてからすぐに出ていれば間に合ったかも知れないのに。私のせいだ。私のせいで、三郎は……

「本当に、ごめんなさい……」

声を殺して泣いた。泣いたってどうにもならない。そう彼は言っていた。どうにもならないのに、なんで泣いてしまうんだろうね。嫌だなあ。

「もう、いいんだ」

三郎の手を握る力が弱くなった。時間が近づいてきてるんだ。言わなきゃ。最期に。今度は後悔しないように。

「三郎、ありが、とう。大、好き」

今度は私が三郎の手を強く握った。私の大好きな手。大好きな三郎の手。一生繋いでいたいなあ、なんて。

「私は、なまえのこと愛してるよ」

「それじゃあ、さよなら」
私はまんべんの笑みを浮かべてそう言った。三郎の声と重なった。

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