小説 | ナノ
TITLE:すごいものになりたい
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「将来お団子屋さんになりたい」
「無駄口叩かずに早くしたら」
喜八郎にそう言われ、ちらりと目の前の宿題の山を見た。これが私の今までの功績かあ。
「うん、無理」
「今まで怠けてたからだよ」
その通りだ。このままじゃ立派なくの一になれない。そもそも進級できないかも知れない。それじゃ喜八郎と一緒にいられなくなる……。それは嫌だからがんばる。
「明日からがんばる」
「いい加減にしたら」
「いひゃっ」
ぐにいっと頬っぺたを引っ張られた。痛い痛い。でもね、今日はこんなに天気がいいんだから、わざわざ屋内に引きこもることないでしょ。
「はぁ……」
やっと手を離してくれた。溜め息吐く喜八郎も素敵。
あ! そうだ! 名案思い付いた!
「私将来喜八郎のお嫁さんになる!」
「いやだ」
そ、即答……。ちょっと傷つく。ぶろーくんまいはーと。なんて思っていると、喜八郎は「だってさ、」と机に頬杖つきながら話を続けた。
「忍者って、いつ死ぬかわからないでしょ」
「え……?」
なにそれ。喜八郎が死ぬかもしれないってこと? こんなに強いのに? 嫌だ。そんなの、嫌。
「私、喜八郎のこと守れるぐらい、強く、な、る」
涙がぽたりと落ちて机に染みを作った。
「だから、そ、なこと、言わないで……!」
「じゃあまず勉強したら」
「わかった!」
涙を拭き筆を握り締めた。千里の道も一歩から。終わらないことは無いよね。なんだか乗せられた気がしないでもないけど頑張ろう。
「本当にそれぐらい強くなったら、結婚してあげてもいいよ」
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