TITLE:犯人は誰だ
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無い。また、無くなってる。
最初は筆。次はタオル。そして服、ノート、化粧品、小説、くし。私の物がどんどん無くなっている。
今日でちょうど一週間。もう、自分でどこかへやってしまった、なんて言っていられなくなった。確実に、誰かに盗られている。
「でも誰に?」
綾部にそこまで話して、そう言われた。穴を掘りながらも聞いていてくれていたらしい。
「わからない」
「うーん。困ったね」
「うん。どうしよう……」
いじめか、ストーカーか。どちらも同じくらい嫌だ。じわりと滲んだ涙を隠すため下を向いたと同時に、綾部が「あ、そーだ」と手を叩いた。
「私がなまえを守ってあげるよ」
いつもの飄々とした口調で言う綾部。でも顔はいつもより真面目で頼りがいがあって。私は安心して泣いてしまった。
「ありが、と、う」
「どういたしまして」
綾部がぎゅうと私を抱き締めた。その時、彼の懐から筆が落ちた。
間違えるはずない。私の筆だった。
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