※最初から燐が悪魔として他の兄弟らと暮らしてるとかそんな妄想。
「これはなんですか?」
「ぱんだ寒」
白と黒のダイスがガラスの器に盛られている。
金のスプーンでつつけばゼリーより若干固めの弾力が伝わる。
鼻をくすぐるのは微かなミルクと甘い蜜の香り。
「いけません、燐。パンダというのはアッシャーの希少生物でしょう?食べるより鎖につないで遊んだ方が……」
「ちっがーう!ぱんだ寒はパンダが入ってるからぱんだ寒じゃなくてだなぁ、牛乳寒と黒蜜寒の二色がパンダカラーだからぱんだ寒なんだよ」
「……なんだ、つまらない」
「お前なぁ……」
燐が大きなため息をついてテーブルに突っ伏す。
気が抜けているせいか隠していた尻尾が顔を出してゆらゆら揺れている。
はしたないとたしなめる気はない。
だって今この場にはボクと燐の二人だけ。
他の奴に見せるのは気に食わないが、ボクは燐の尻尾も含めてお気に入りなのだ。
そして燐が作る料理も大好き。特に甘味の類が堪らない。
「おいしいですよ、燐」
「そりゃ良かった」
「今度は本物のパンダを使ったデザートが食べてみたいです。ボクが材料を確保しますから」
「却下!!」
怒った顔もまた可愛い。
可愛い弟を愛でながらボクは黒と白のダイスを一度に口に入れ、ミルクと蜜の混じり合う味をじっくりと楽しむ。
咀嚼すればさらに二つは混じり合い、なんだか卑猥なことを想像してしまって音を立てて飲み込んだ。
「燐、おかわり」
本音は君もいただきたいのだけれど、兄上が遠見で睨みをきかせてきたので今日は我慢いたしましょう。
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bkm