3.5.
※前回から急上昇。
※矛盾しているようですが同じ燐です。
※捏造八候王注意報発令!よんでますよ●●●●さん。






「アマ兄―、いっくぞー」
「いつでもどうぞー」
「せいっ!」

燐とアマイモンの二人は最近キャッチボールに熱をあげている。
キッカケはメフィストが所有している漫画だ。
バッテリーという関係に興味を持った二人は早速メフィストにねだってグローブなどを揃えてもらった。ちなみに燐がピッチャー、アマイモンがキャッチャーである。
しかし二人のキャッチボールは物質界のキャッチボールと大きく異なることがある。
まず球が普通の硬球ではない。ダイアモンド並の高度を誇る虚無界の匠が作った特別製だ。
そしてそんな球を使わなければいけないほどの投球速度。
更に。

ジュウウウウ……。

まるで鉄板の上でステーキが焼けているかのような音だが、その正体は燐の投げた青い焔を纏った球をアマイモンが見事キャッチした音だ。
燐の魔力は日増しに強まり、比較的平和なキャッチボールは別としてアマイモンとじゃれる度に出る被害も日々大きくなっていた。
別にアマイモンの城がいくら壊れようと構わないメフィストだったが、このままだとこれから先不安なことが多いのも確かで。
楽しそうに遊ぶ弟たちを眺めつつぼんやりと思案しながら爽やかなミントティーに口をつける。そして熱いお茶からふわりと立ち上る湯気を見て、メフィストの脳裏にある一人の男の姿が思い浮かんだ。

「そうだ。あの男なら……」

名案を思い付いたと口角をあげたメフィストは携帯のアドレス帳を開き、今まで一度もかける機会のなかった番号に電話をかけたのだった。







「あ、ああああの、あの、あの、」
「お前がメフィ兄がいってた家庭教師か?」

燐は目の前にいる男を不思議そうな顔で見上げた。
男はあちこちに視線を彷徨わせてはそわそわと落ち着きなく指を弄っている。
男の身長はメフィストより低くアスタロトやアマイモンより高い。しかし丸まった背中とおどおどした喋り方のせいで実際より小さく見えた。
長い前髪のせいで顔立ちは隠れているものの淡い桃色の前髪の隙間から見える黄金色をした猫目、すっきりとした鼻梁、細い顎と素材は決して悪くない。
ただし体が半透明のせいで何分印象が薄いのだ。
実はこの男こそ八候王の中で最も影が薄く存在感がないと言われる氣の王だった。

「お、おれはア、アザゼル……。い、一応、君の兄で、氣の王なんだけど……」
「すっげー!スケスケなのにちゃんと触れるー!」
「ちょっ、あの、は、話を……」
「えーと、スケスケじゃなくて、あざ…ぜる?だから、アザ兄?」

良く輝く宝石のような青い瞳で見つめられながら問われれば、アザゼルは戸惑いながらもただ頷くしか出来なかった。

「よろしくな!アザ兄!」

誰かにここまでまっすぐに見つめられたことも、楽しげに話しかけられたこともないアザゼルは瞳を大きく見開いた。

(末の弟に力の使い方を教えろとメフィストに脅されたときは面倒事からどうやって逃げおおせようかそればかり考えていたけれど……)

こわばっていた顔を綻ばせてアザゼルが小さな手を握り返せば、燐もまた白い歯を見せて向日葵のように笑みを返して手を握り返す。

(でも、悪くないかも……)

この日、頼りない半透明の手をしっかり握る小さな手に不覚にも励まされてしまったアザゼルはめでたく燐の家庭教師に着任。
この件に関して腐の王が激昂してメフィストと血みどろの戦いを繰り広げることになるとは……燐とアザゼル以外はなんとなく予想がついていた。




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