お弁当a.(アマ←燐)
※エクソシスト関係ない学園パロ。
※アマ←←←燐。アマが結構ひどい男です。
※メフィと獅朗が燐馬鹿。





正十字学園高等部、ある日のお昼休み。
人気のいない校舎裏にあるベンチに腰掛けているダメージ加工を施してアレンジした制服を着ている生徒、アマイモンはお気に入りの棒付き飴を舐めながら携帯を弄っていた。アマイモンはお菓子やジャンクフードの類はよく口にするものの食事らしい食事はあまり摂っていない。そのせいか喧嘩では負け知らずで、正十字の破壊者の異名を持つほどの腕っぷしにもかかわらず不健康極まりない見た目をしている。
そんな不良すらも避けて通るアマイモンに自ら近づく稀有な生徒が一人いた。
同じく正十字学園の制服を着ているがこちらは若干着崩しているものの凝ったアレンジなどはしていない。無愛想で粗野な感じはするものの顔立ち自体は凛々しさと可愛らしさが共存したなかなかのベビーフェイスだ。名前は奥村燐。彼もまた「悪魔」と罵り怖れられる程喧嘩が強いことで有名だった。
ベンチに座るアマイモンの前で燐が立ち止り、何やら真剣な顔でアマイモンを見つめている。
彼らの『事情』を知らぬ者が見たら「宣戦布告だろうか」「ここでバトるのか!?」とざわめく光景だ。

「あ、アマイモン、今日雪男弁当要らないの忘れてて、いつもの癖でつい作っちまったんだけど……」
「はぁ」
「良かったら食わねぇか?その、勿体ねぇから」
「しょうがないですね」
「!!」

溜息をつきながらアマイモンは燐の手から緑と黒のストライプ模様が入った巾着を受け取った。本来雪男用の巾着は青地に白い水玉のもので、この巾着はアマイモン用に用意したものだ。つまりこの弁当自体最初からアマイモン用に作ったものなのだが、受け取ってもらえるとは思っていなかった燐は僅かに目を見開いて頬を紅潮させている。しかしそんな燐の様子に気づかないアマイモンは「じゃ」と素っ気ない言葉を残して踵を返してどこかへ立ち去ってしまった。

「しっんじらんねぇ……」
「全くです」
「なんでウチの天使の手作り弁当を貰ってあんなに嬉しくなさそうなんだよ!」
「人気のいない校舎裏で可愛い妹ポジションの後輩からのお弁当差し入れ、こんな美味しいイベントでフラグを立てないでどうするんですか!?」

二人のやりとりを双眼鏡やオペラグラスで遠くから観察していたものが二人いた。
一人は正十字学園理事長でアマイモンの兄であるヨハン・ファウストことメフィスト・フェレス、もう一人は奥村燐の保護者である藤本獅朗神父である。
この二人は若いころからの親友であり、そのため燐とアマイモンも幼馴染の関係であった。実を言えば燐もメフィストの弟なのだが訳あってその事実は伏せて生活している。その辺りの事情は込み入った内容の為、申し訳ないがここでは説明を差し控えさせていただく。
さてこの二人、親友というより悪友という表現の方がふさわしい。生まれも育ちも性格も嗜好も全く違う二人が意気投合する話題は実は少ないのだが、合うときはとことん合う。そしてその意気投合できる話題の一つが奥村燐についての話題だった。
藤本にとっては可愛い息子、メフィストにとっては可愛い末の弟で、二人は目の中に入れても痛くないほどの可愛がりようで燐を蝶よ花よと育ててきた(実際は血飛沫よ泥よといった有様だったが)。
その過ぎた愛情が仇となって最近は煙たがられ、こうして遠くから見守るのが日課となっていたりする。

「つーかよ、俺だって最近燐に弁当作ってもらってねーのに、なんであのトンガリ頭が貰えてんだよ!?」
「そんなこと言ったら私なんて一度も貰ったことないんですけど!?」
「……何やってんですか、二人とも」

悔しそうに煙草のフィルターを噛みちぎらんばかりに歯ぎしりする藤本と可愛らしいハンカチを噛みしめるメフィストがいる部屋に先ほど燐から弁当を受け取ったアマイモンがやってきて怪訝そうに眉をひそめる。

「お前っ……!」
「それは燐君の手作り弁当!!」

同時に振り返った二人の血走った眼にも動じず、アマイモンは「あぁ」と思い出したように緑と黒のストライプの巾着を持ち上げてみせた。そしてそれを何の前振りもなくひょいっと放り投げる。

「「!!!?」」」

声にならない悲鳴をあげて二人はいっせいに駆け出して巾着に入った弁当を無事死守した。その様子に無表情だが感心した様子で口笛を吹いたアマイモンはぱちぱちと手を叩く。

「凄いですね、二人とも。あ、ボク今からドルドルバーガーに行くんでソレあげます」

そう言い残してさっさと扉のむこうに消えたマイモンを床に這ったまま黙って見送った二人だったが、その体は怒りからかぷるぷる小刻みに震えている。

「お、お前の、」
「血は一体……」
「「何色だー!!!!!」」

二人の渾身の絶叫は無情にもヘッドホンをつけたアマイモンに届くことはなかった。








弁当a.=副題『嗚呼、弁当』




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