1.5.


「アマにぃ!どうしたんだよ、それ!」

服はズタボロの上に包帯ぐるぐる巻きで、片目が隠れたアマイモンの姿を見つけるや否や燐は大きな瞳を潤ませて駆け寄った。

「痛い?痛い?」

まるで自分が痛いかのような悲痛な顔をして燐は包帯の上からアマイモンの顔や体を優しくさする。
包帯の所々は血が滲んでいて、鉄錆の匂いは燐の鼻をついて口の中まで広がってきた。

「大丈夫です、ボクは強いですから」
「強くても痛いもんは痛いだろ!?」

目に涙を浮かべながら怒る燐にアマイモンは目を見開く。
アマイモンは燐が何故怒ったのか正しく理解できない。
どうしたものかと首を傾げるアマイモンの首に燐の短い腕が回され、ぎゅっと温かい体が密着した。

「……アマにぃが痛い思いするの、やだ」
「だから痛くないので大丈夫ですよ。でも、そうですね」

震える小さな体を抱きしめ返しながらアマイモンは一つしかない目を閉じる。
規則正しい鼓動と温かい体温に熱い涙に吐息、柔らかい肌に髪に唇。
全身で大切な存在を感じて受け止めてから、丸い頬を伝っている涙に舌を這わす。
塩辛いようでほんのり甘い滴がじわりと口の中に広がって、アマイモンの顔が自然と綻んだ。

「ボクは燐が泣いていると胸のあたりがズキズキします」
「オレが泣いてると……?」
「ええ、だから笑ってください」

光差さない虚無界の冷たく暗い地の王の城。
その中でも二人のいる場所だけはまるで陽だまりのようだった。





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