豆大福(廉造→燐)

※短いです。京都弁がわからんです。




みょーん。
みょみょみょ、みょーん。


これは動物や悪魔の鳴き声ではない。
ただしサタンの落胤、奥村燐から発せられているだろう音だ。
いや、正しくは音ではない。
何故なら空気の振動で伝わっているわけではないからだ。
震えているのは心。
そう、この場にいる志摩廉造の心である。

「坊、子猫さん」
「何や」
「あのかいらしい生き物、なんですのん?」
「奥村やろ」
「奥村君ですね」
「ええ、奥村君ですわ。つまり奥村君は何であないにかいらしいんやろーって話ですよ」

真剣に語る志摩に対して勝呂と子猫丸は若干、否、勝呂に関してはかなり顔を引き攣らせた。
そんな二人に構わず、志摩は実家から送られてきた箱を持って燐に駆け寄る。

「奥村君、も一ついかがですか〜?」
「え、いいのか!?」
「かまへん、かまへん♪」

箱の中身は志摩の実家から送られてきた京都で有名な豆大福である。先ほども一個燐におすそ分けしたのだが、志摩はもう一度燐が豆大福を食べる姿が見たくて自分の分を譲ったのだ。
燐が目をキラキラ輝かせて柔らかい豆大福に噛り付く。

みょみょみょみょみょ〜ん。

そう、この音は燐が豆大福に噛り付いて餅が伸びる様を見た志摩の頭の中に響いた脳内効果音であった。
よく伸びる豆大福を一生懸命頬張る燐の姿は実年齢よりも幼く、そして無邪気に見える。

「ほら奥村君、お茶もあるよって」
「ん、んぐ、んっ、ありがとな、志摩!」

大福の粉を口周りにつけた燐のまぶしいほどの笑顔に志摩は額に手の甲を当てふらふらと勝呂達のもとへと後ずさる。

「あかん……あかんて、奥村君。もう俺の心は遠く彼方に飛んでって消えてまう」
「いっそ往生せぇ!」

……見るに堪えられなくなった勝呂がピンク頭に錫杖を叩きつけても、志摩は心底幸せそうな顔だったという。





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