▽ザーメン歯磨き


夕御飯である遙のサバ料理も食べ終え、ゆっくりとお茶を飲んでリビングで寛いでいるときだった。

遙がおもむろに、テレビに映る愛らしい動物たちに目を奪われていた名前の肩を掴む。

視聴を邪魔された名前は少し悲しそうだが、遙は構わず言葉を紡いだ。


「名前、歯磨きしてやる」

「…………えっ?」


はみがき?
名前は言葉を反芻する。

目の前の兄は確かに、「歯磨き“してやる”」と言ったのか。してやる、とはつまり、遙が名前の歯を磨いてやると言うことであろうか。

時間を置いて意味を理解すると、名前はそっと肩に置かれた遙の手を退かした。


「ええと……、自分で出来るよ?」

「まあ……遠慮するな」

「し、してない……」

「さあ来い、俺の膝に……!」

「じ、自分でやるから!」

「来い!!」

「ひゃああっ!」


少しずつ距離をとっていた名前を引っ捕らえ、遙は無理やり膝に座らせた。

居心地悪そうに身を捩る名前とは反対に、遙は腕に収まった名前の髪に顔を埋め、非常に満足そうだ。

名前は兄の突然の行動に目を白黒とさせ、まず病気であることを疑った。


「どどど、どうしたの遙! あ、そうだ……熱! 熱計ろう? ねっ?」

「いやだ。俺はとにかくお前に歯磨きがしたい」

「まっ……、まこちゃーーん!! 遙がおかしくなったぁーー!!」


向かいの家の幼馴染みを呼ぶが、声は届かず。


「……ふっ。いくら呼んでも、真琴は来ない……」

「そ、それなんか悪者みたいだよ!」

「さあ名前、大人しく観念しろ」

「いいいいまっ!いまどこから歯ブラシ出したの?! ねえ!! 変なところから出したよね!?」

「変なところって……、ただの水着だろ」

「家では水着脱ごうよ……っ!!」


その言葉を最後に、名前はとうとう遙に組伏せられてしまう。
スポーツをしている兄に力で敵うわけもなく、名前は諦めて大人しく力を抜いた。

(すごく嫌だし、恥ずかしいけど……でも、誰に見られるわけでもないし、遙がこんなに言うなら……ちょっとくらい我慢して……)

「今歯みがき粉出すから、少し待ってろ」

「う、うん……。んえ?!」

「くっ……、待ってろ……すぐ、んんっ 出すっ!から……っ!はあっ……」

「待って遙おかしいよ!そんなの絶対おかしいよ!!」


遙は名前の前でマスターベーションを始めた。

長年兄妹としていっしょに暮らしてきて今さら、“歯みがき粉を出す”ということだけでこんなに行動に違いを感じるとは思いもよらなかった。

名前は、いきなりイチモツをしごきだした兄が目前にいるのに大人しくしていることなんてできずに、両腕を突っぱねて遙から距離をとろうとする。

それでも夢中で手を動かす遙に、サッ、と名前の顔が青ざめた。


「あっ……はあ、はあ……っ!」

「遙ぁ……考え直してよぉ……っ」

「ん、くっ……名前……っ、口開けてろ、もう……すぐだ……!」

「いや……いやぁ……っ! まこちゃん……遙を止めに来て……!」

「ぅあ……っ……名前……!」


────妹の声は兄に届かず。

無慈悲にも遙は、実妹に己の子種をぶちまけた。


「はあっ……はあっ……」


名前は呆然として、息を整えている遙をただ視界に入れていた。

頬を伝い落ちる白濁液に、恐る恐る手を伸ばす。

──ぬちゃ……っ

触れた指先に糸が引く。そうして何が起きたのかやっと理解した。瞬間、名前の涙腺が緩む。


「うっ……そ、そんな……っ」

「……名前」

「わ、私たち、兄妹だよ? なのに……ひどいよ、はるか……」

「名前…………イイ顔だな」


名前が、愉快そうに口元を歪ませる遙を睨み付ける。
しかし涙目でのそれは煽るようにも、続きをねだっているようにも取れた。

遙が絞るように出した精液を歯ブラシへ掛けて、名前の口内へブラシを挿し混んだ。

口に広がる精液の味に、おもわず目尻から涙が溢れる。

舌で歯ブラシを追い出そうとするのだが、遙はそれを無視して歯を磨き出す。
──精液を擦り付け出した、と言う方が正しいか。

日常的な行為が、日常では考えられない異常な行為となった。


「っ、うぇえっ……や、やらぁっ……!」

「我慢しろ」

「んぐぅっ……! はるか、きらいっ!やらっ!」


ごちゃごちゃと煩い名前の舌を精液まみれの歯ブラシで押さえ付けてしまえば、意味のある言葉は出てこなくなった。

いつも自分に甘えていた妹の反抗的な目を見つめていると、ゾクゾクとした感覚が腰にクる。

名前はもはや弱々しく遙の胸を押し返しているだけで、ほとんどこの行為をやめさせることを諦めている。

精液の臭いを嗅がないようになるべく口で息をしようとしているが、そうするとそのたびに精液を飲み込んでしまいそうになってはえずく。

遙に顎を捕まれて口を閉じることも出来ない。

遙は、自分の吐き出した小さな生命たちが名前の口内で息巻いていると思うと、もう痛いほどにペニスを膨張させてしまった。


「っふ……うぁ、う……っんん"ぅ……!」

「名前、ちゃんと“あーん”しろ。やりにくい」



──遙が精液を泡立てながら夢中で名前の口内を犯していると、誰かの足音が二人のいるリビングへ近づいてくる。

二人はそれに気付かない。





「あのさ、母さんがおかず作りすぎちゃって……よかった、ら…………?」


ひょっこりとリビングに顔をだした真琴。

彼がその目に見たものは、顔中に白くてドロドロねっちょりとした液体を垂らしながらすすり泣く名前と、そんな名前に馬乗りになって歯ブラシ片手に興奮している遙だった。


「………………お邪魔、しました」


──真琴の今晩のオカズが決まった瞬間である。






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