「名前は怖い夢を見ると勝手に俺の部屋に入って布団に潜り込んでくるところが可愛い」
「……」
「名前は俺が泳いでるときに、やけに笑顔で俺を眺めてくるところが可愛い」
「…………」
「名前は……」
「チッ! さっきからチラチラ見てくるんじゃねぇよ! 名前だろ!? わかってんだよ!」
「……お前に名前の何がわかるんだ? 俺以上に名前を理解してる人間がいる筈ないだろ。 凛は名前の魅力の半分……いや、半分以下もわかってない」
「め、めんどくせえ……!」
「名前の魅力を言ってみろ。 言えないだろ。 凛、しょせんはお前もその程度なんだ」
「……なんだと?」
「コウなら言えるだろうな。 あいつは名前のことをよく構ってやってるし」
「俺の妹なんだから名前のことをわかってんのは当たり前だろ……」
「つまり兄のお前も名前のことをわかってるって言うのか? ……ふ、ありえないな」
「本当……むかつくぜ……っ!」
「例えば、だ」
「ああ?」
「名前とコウが同時に沖に流されたとする。 助けられるのはどっちかだけだ。 お前はどっちを助けるんだ」
「そりゃあお前……名前は、泳げるだろうが……。 江は運動できねえし…………どっちかだけなら、江だ!」
「…………はあ」
「うるせえな! 家族か恋人なら普通は家族を取るだろうが!」
「……名前と恋人になった気でいるのか?」
「ぐっ……しまった……!」
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