「じゃあ俺飲み物持ってくるから」

「うん!」

「適当に座っててね」

「はーい! いってらっしゃーい!」


真琴が部屋を出たのを皮切りに、名前は弾かれたようにベッドの下へ手を突っ込んだ。

──狙うは、エロ本。

あの優しく、人当たりもよく、世話好きで老若男女すべてに好かれる要素をおよそ持ち合わせているであろう橘真琴。
そんな彼の、“ピンク”なところが見てみたい! と立ち上がったのが苗字名前だ。

名前は、真琴がでろっでろの、どろっどろに溺愛している恋人だ。名前が近くにいると、真琴は3割増しで頬が緩む。

そこまで愛されているとは知らない名前は、周りの女子生徒諸君らの、「橘くんって夜はどうなの? 甘い顔によらず獰猛なの?! シャチなの!?」という後押しの声をきっかけに、今回の行動へ踏み切った。

二人はいまだに“そういった”行為をしたことがなく、名前もちょうど、いい加減キスよりすごい何かをして欲しいと思っていたところである。

彼氏のエロ本を漁った末のちょっとしたハプニングなんかもまた一興だ。


(とうとうあの優しすぎる真琴くんの化けの皮が剥がせるのね……!)


期待に膨らむ豊満な胸を床に押し付けながら、名前はベッドの下、その隅々までを探る。

……が。


(……埃一つ、ない……?)

男子高校生の部屋に埃一つないとはどういうことだろうか。橘真琴は、どこまでも清廉な生物ということなのか……。

異常とも言えるこの事態に、名前は更に大胆な行動に出る。
クローゼットやら、タンスやら。目につく所はすべて漁った。

そして、ついに見つけたのだ──!


「こ、これ……!」


質感にこだわったシリコン製の手触り、全体にびっしりとパチンコ玉ほどのイボがついたボディ、名前の指が回らないほどの太さ……そして驚愕の長さ、張り!

紛うことなき、これは──!


「……名前ちゃん? なにしてるの?」

「みっ見てないからぁ!!」


名前は咄嗟に手に持っていた“ナニ”かを投げ捨てた。
それはちょうど真琴のベッドへと落ち、ものものしい雰囲気を醸し出す。


「あっ、あれは……!」

「えっ、あー!あのね!見るつもりは無かったんだけどちょっとたまたま手がね、ほら迷子になったっていうか、そうたまたま見つけちゃってこれなにかなー?っておもって見てただけで、もう全然その、いいと思うわけね?真琴くんだっておおお男の子だものね!?そう、だからね、その、いいと思うわけね!部屋に……ああいうのがあっても、ね……!」

「つまり……部屋を漁ったってことだよね?」

「そうなんです、漁ったんです!」


あっという間に観念してしまった。


お盆片手に部屋に戻った真琴は、大人しく正座をして気まずそうに身を捩っている名前を横目に、飲み物やらが乗ったお盆を適当に置く。

そしてゆっくりと名前の前に腰をおろすと、大層真剣な声色で告げた。


「……実は俺、アダルトグッズマニアなんだ」























あの優しく、人当たりもよく、世話好きで老若男女すべてに好かれる要素をおよそ持ち合わせているであろう橘真琴の口から出たのは、とんでもない告白だった。

名前が、空気が固まる。


「(知りたく、なかった……)」


こんなこと、女子生徒に話せるわけもない。名前は真琴のいたってノーマルな趣味の本が見つけられればそれでよかったのだ。
「きゃー真琴くんったら巨乳モノが好きなんだーいやーん」などと盛り上がれたら、本当に、ただそれだけでよかったのだ。


「一番最初に買ったのはこのピンクローターなんだよ」


頼んでもいないのに、真琴の玩具談義がはじまった。
彼はいつの間にかどこから出したのか、多種の玩具が入ったダンボールを2箱、目の前に置いている。


「たまたまインターネットで見つけて、思わず買っちゃったんだ。緑、青、赤、黄色、紫……たくさん色があったけど、やっぱり一番気になったのはオーソドックスなピンクだった…………。あと緑。今あるのは全カラー1つずつに、ピンクが……10個くらいかな」

「(どうしてお金をドブに捨てるようなことを……!?)」

「……はじめての彼女に興奮していた俺は、手当たり次第にアダルトグッズを漁った。名前ちゃんがつけることを考えるとどれも良いものに思えてきて……お財布の許す限り買っちゃってね……。あのバイブには一目惚れで、そう、まさに名前ちゃんをはじめて見たときと同じ衝撃が俺を襲った。この素敵なバイブを……大好きな名前ちゃんがつけたら……? いったい俺は、どうなってしまうんだろう…………?いろいろ考えてたら……ふふっ……勃起……しちゃってね……」


期待に満ちた瞳で名前を見た。真琴には、目の前の名前が裸体にでも見えているのだろうか。
名前は体にまとわりつく視線に、自分の体を抱いて隠した。


「(目がイッてる……イッちゃってる……!!)」


両手いっぱいにローターを持って迫り寄ってくる真琴の息は、とにかく……荒い。


「お、落ち着いて、真琴くん……。誰にだって……そういう、趣味?みたいな、ものはあるよ……でもね、それを他人に強要するのは……どうなのかな?って、ね?私は思うなあ!」

「他人じゃなくって、彼女だよね?」


名前の背後にはベッド。
そしてその上には雄々しいバイブ。

目の前には……、


「……お願い……ちょっとだけでいいから……」

「うう……っ」


橘真琴、渾身の困り顔である。
これが無自覚なのだからたちが悪い。


(どうしよう……。真琴くん、両手いっぱいに持ったローターを全部使いたがっている……!)


確かに、雰囲気に任せてキスより先へ行けたなら……、と考えもした。が、さすがにあれだけの玩具を使わせてやれるくらいの度胸は生憎、持ち合わせていなかった。

……女は度胸とはよく言うが、こんなところで使われるのは度胸と言えどもお断り願いたがってるだろう。

やはり、ここは断る他ない。



「あのさ真琴くん!やっぱり、」

「……名前ちゃん、好きだ……。俺、もうこれ以上我慢できない……」

「……うん…………い、一個だけなら、使ってみても、いいかなー、なーんて……っ!? わあっ!」


名前が真琴の誘惑に折れた瞬間、真琴は名前を抱き締めてベッドへ飛び込んだ。

荒々しくスカートに手を入れてあっと言う間にパンツを取り去る。


「ええっ?! ちょっ、ちょっと待って!」

「えっ でも、今いいよって……」

「も、物事には、順序というものがあってね真琴く……んっ!」

戸惑っていた様子で名前の顔を見つめていた真琴が、おもむろに口付けた。
普段しているような、唇を触れあわせるだけの可愛らしいものだった。


「真琴……くん……?」


真琴は名前の好きな、穏やかな顔で笑った。


「さっきも言ったろ? 名前ちゃんのことが好きだって。……だから、無理はさせないよ」

「ま……真琴くん……!」


そうだ。
たとえ玩具マニアの変態だったとしても、真琴がどこまでも優しい人間で、名前を大事にしている出来た彼氏であることに変わりはない。

……名前はついさっき、無理矢理パンツを脱がされたことは置いておいた。


「ローター……、使ってもいい?」

「……うんっ! 優しく、してね……」


真琴はさっそく、小さめのスーパーボールほどの大きさをした緑色の丸いローターを1つ手に取り、名前にそれを舐めさせる。


ちゅ、ぷ……っ

「ん、むぅ……」


指ごとローターを入れて、舌に押し付けた。

ローターを挟んだ指が名前の口内をくちゅくちゅと動き回る。

舌をローターでくすぐったり、指を甘噛みさせたりすれば、二人の興奮はさらに高まった。

そうして名前の唾液でローターを充分に濡らすと、真琴はひっそりと閉じられた柔らかな恥丘に指を這わせて、桃色の一本筋を「くぱぁ……っ」と開く。

「わあ……」と思わず漏れた感嘆のため息が名前のまんこを震わせた。


「ひゃふん、っ……!い、息がぁ……!」

「名前ちゃん、まだ触ってないのにおまんこ濡らしちゃったんだ……可愛い……」

「へ、変なこと言うならっ、やめる!」

「ごっ、ごめん!そんなつもりじゃなくて、本当に、可愛いから……! えっとじゃあ……入れるね?」

「んんっ、はぅ……ん!」


ちゅぷっ……くにゅっ、くにゅっ

……くぷんっ


緑色のローターが膣内へ姿を消す。


「はぁ、う……は、入っちゃった……」

「うん、俺が入れちゃった。痛くない? 大丈夫?」

「なんか……んん、変な感じ……」

「……っそっか、うん。変な感じ……ね」








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