「じゃあ名前ちゃんは、僕達が凛ちゃんに会ったあとに、凛ちゃんに会ってたってこと?」

「う、うん……」

「どうして……言ってくれなかったの?」

「……ごめんなさい、マコちゃん」


名前は洗いざらい全てを話した。

凛が帰国してきたその日に会ったことや毎日連絡を取り合っていたことなどを、ポツリポツリと溢していく。
真琴は、名前から事実を聞くたびに胸の奥で沸々と黒い感情が沸き立つのを感じた。

凛と名前が連絡を取り合っていたことを知らなかった時は、素直に名前を想うことができた。
時期で言えば中学一年生から今まで。
名前もきっと、凛のことは淡い初恋だと気持ちを切り替えているものだと思っていたのだ。

しかし実際はどうだ。
名前は一途にも凛を想い続け、一度だって真琴に目を向けたことはなかったのである。

ほんのわずかばかりではあるが、友人としての悲しみもあった。
凛も名前も、真琴の大切な友人に変わりはないのだ、素直に教えてくれてもよかったのではないか。


「ほ、本当は、言おうとしたの! ……言い訳みたいだけど……でもなんだか凛が、ええと……」

「俺たちの話を避けてた?」

「うん、はっきり言っちゃえば……」

「やっぱり凛ちゃん、昔とは変わっちゃったのかな……」

「…………」


名前は名前で、遙達と会った際の凛の様子を聞いて、いささか信じられない気持ちだ。

久々に会った凛は確かに小さな頃と雰囲気は変わっていたが、真琴や渚の言うように、思い出のトロフィーを乱暴に扱ったりするようにはとても思えなかった。

あの時、凛の様子がおかしかったのは遙たちと一悶着あったからだったのか、と名前は合点がいく。


「二人とも、黙っててごめんね。 早く言っておけばよかったね……」

「ううん、気にしないでよ! ねっ、マコちゃん! マコちゃんも気にしないよね?」

「あ、ああ……。 そうだね、これからはちゃんと言ってくれたらいいからさ」

「えへへ……ありがとう」


こそこそと凛と連絡を取っていたことに、何も思わないわけではなかった。
こうして打ち明けたことで気持ちはスッキリとしたが、変わりに凛への罪悪感が胸を襲う。


(……でもやっぱり……喧嘩してるなら仲直りしてほしいな……)


凛が遙達を邪険にするのには何か理由があるのだろう。

みんなの中心にいて、今よりもうんと引っ込み思案だった名前を引っ張り回してくれて、ぶっきらぼうな所もあるけれどとても優しい……。
名前の中の凛は、今でもあの頃のイメージを引きずっている。

名前はどうしても「凛が変わってしまった」という渚の言葉は信じられなかった。







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