訓練兵団に入って早幾数月、私は厳しい訓練に毎日くたくたになっていた。
体力がないのが原因だからかな……調子に乗って家を飛び出すんじゃなかった本当に……。
後悔しても仕方ないので通常訓練が終わると私は毎日自主的な体力作りをすることにしている。
まあただ走るだけなんだけど訓練後にすることもあってかなり足腰に堪えるんだこれが……。

もう今日はこれくらいにしてお風呂入って寝よう……。
あの煎餅布団で到底疲れがとれるとは思わないのけどベッドはベッド
それでも男子部屋のくっせえベッドよりはましだ。
男女で汗の違いがあるだなんてあまり思わないけどとにかく臭いのなんのって……月一で布団は干すことになっているんだけど男子のものを干すときは苦痛で仕方ない。
どう寝たらあんなに臭いが……アホか……。
なんか思い出したら気分悪くなってきたしお水でも飲もう……。

「エレンてめえぇ!!」
「なんだよ! いつも思うけどお前は何に対してそんなに切れてんだよ! 急すぎだろ!!」

うわあ、あの二人またやってるんだ……。
階段を上ろうとしたら上からエレンとジャンの喧嘩する声が聞こえた。

エレンのすっとぼけ発言はジャンに少し同情するけどこんな所で喧嘩しないで欲しい。
少し遠回りしようかな……。

「あっ、おいジャン! 危ねえぞ!」
「はあ!? てめえに心配される筋合いはね……あがっ!」
「うわあ!ジャンが落ちて……ま、任せて!」

取っ組み合いの末ジャンが階段から落ちてきた。たまたま下に居合わせた私は、ヒーローよろしく、ジャンをキャッチしようと身構える。

「ふがっ!」
「ウッ」

く、くう〜……衝撃が身に染みる……。

なんとかジャンを助けようとしたのだけど……なぜか勢いのまま回りに回った末、結局私がジャンを下敷きにしていた。

「あのね、違うんだよジャン、私は本当に君を助けようとしてだね」
「え、お、おう……」
「あのなんだか結局私がジャンに助けられたみたいな……そういう格好になってしまったわけなんだけど……その、私の誠意は伝わったと思うんだ……仲間思いだから…実は、私は……そして階段から落ちたのはそう……ジャンだ」
「……」

私は、いったいなにを言って……?
頭をどこかに打ったのかもしれない。
ジャンも私の言葉に目を白黒させてモジモジしている。

……モジモジ?


「名前、その……よ」
「お礼なんていらないよ、ほら仲間なんだから」
「手……手が……名前の手……手が、あた……」
「てて? 私のててガーター?」
「へ、変なところさわってんだよ! 気付けよこのビッチ!」
「あ、ああん?! ジャンてめえ私のどこがビッチなんだおらあ!」
「お……俺の胸っ、いつまでも触ってんじゃねえよ……っ!!」
「えっ?」

ジャンも頭を打ったの……?
それくらい訳のわからないことを言い出して……私がジャンの胸、というか胸板に片手を置いていてしまったことを異様に気にして……え?なんで?
男の子ってそんなに胸を重要視してるものなの?
というか胸を隠す必要性が感じられない……なんかジャン気持ち悪いな……。

「おい大丈夫か名前! あとジャン」
「ジャンはおまけなんだ」
「名前……責任とってもらうからな……?」
「何に対してのだよ……」
「なあ名前! ジャンの奴が悪かったな! 今度責任とるから! 俺が!」
「エ、エレンが!?」

な、なるほど……なんだ、二人は喧嘩するほど仲が良いっていうのは本当だったんだ。
相変わらず責任だか胸だかジャンだかはよくわからないし、いやほんと訳がわからないけどもうとにかくヘトヘトなので早く水飲んで寝よう。





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