今日は屋上ではなく芝生の上でお昼を済ませて、遙、真琴、渚の三人はぐだついている。 名前は一緒ではない。 早速友人同士になった怜とお昼をとったのだった。 名前と怜はその間、お互いに「怜くん」「名前」と呼び合うほどに仲を深めていた。
この場にいない名前を気にしながらも、遙達は昨日偶然会った凛について話している。
「でも本当なんだったんだろう……凛ちゃんおかしかったよ?」
「そっくりさん」
「そっくりさんがなんでハルに勝負を持ちかけるのさ」
「なら幽霊」
「足あったよ?」
「じゃあドッペルゲンガー」
「あっ! それ懐かしい! スイミングでも流行ったよね? 超絶合体、ドッペルゲン!」
「マコちゃんなにしてるの?」
「わああっ!! 名前!?」
「あれ、名前ちゃん」
「えへへ、遠くから見えたから来ちゃった! なんのお話ししてたの?」
よいせ、と若者らしくない声を出して真琴のちょうど前に腰を下ろした名前。 真琴は名前に先程の行動を見られたことを気にして静かに俯いている。
「名前ちゃん、竜ヶ崎くんと一緒じゃないの?」
「り、りゅうがざき……"くん"?」
聞かない男の名前に反応したのは兄の遙と復活した真琴だ。 名前から友人と一緒に昼休みを過ごすと連絡が来たときには兄として、幼馴染みとして、素直に二人で安心していたのだが……、それが男となるとまた話しは変わってきてしまう。
「なんか部活関係で呼び出されて……。 あ、そういえば私、怜くんに陸上部のマネージャー誘われ……」
「れ、れいくんっ!? 名前呼び!?」
「ひゃあっ! ま、マコちゃん!」
真琴は思わず名前の腕を掴み詰め寄った。
「ええと、どうしたの?」
──なんだか今日はよく顔を近付けられる日だなあ。 真琴は穏やかで滅多に怒ったりはしないが、こうして取り乱す真琴を名前は見慣れているため至って平静に聞いた。
「な、名前で呼んでるの……? その子のこと……」
「う、うん? お友達だし……」
「名前ちゃん名前ちゃん、マコちゃんはね……嫉妬してるんだよ!」
「…………真琴」
「なに言ってるんだ渚! 俺はただ心配……って、遙そんな目で見るなってぇ!」
「いたた……マコちゃん、腕痛いよ……」
「ご! ごめん名前!」
少し強く握り締めすぎたのか、名前が声を上げた。 パッと二の腕を離した真琴だが、無意識に手にあった感触を思い出して顔を赤らめた。 二の腕の柔らかさは、胸の柔らかさと似ているらしい。
結局凛の話題はそれから出ず、午後になると遙は早引きした。
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