「というわけなのだが名前、この依頼は君にお願いしたい」

「はい、まかせてください鳳凰様。 この不肖名前、たとえ命に変えても……そう命に変えても!この依頼成し遂げて見せましょう!」

「危険に関わる事ではないからそんなに肩肘を張らなくてもよいのだが……まあ良い。行っておいで」

「はっ!あの……帰ってきたらぁ……なでなでしてください!」

「ああいいとも。なんなら膝枕もつけよう」

「やったー!名前頑張ってきます!!」


以上が、真庭名前が忍術学園にくるほんの少し前にあった出来事である。


「真庭せんせー!おはようございまあす!」

「お早う、一年は組の良い子の諸君」

「先生、今日も大変お麗しい」

「ありがとう立花くん。 手裏剣を打つ際の癖をあとで直そうか」

「覚悟しやがれ真庭名前!」

「食満君はもう少し静かに襲いかかりたまえよ。 立花くんを見習いなさい」


下級生には優しい新米教師、上級生にとっては殺す気で挑んでもなんら問題のない都合の良い修行相手として、真庭名前は忍術学園での生活を楽しんでいた。
たとえその場に敬愛する真庭鳳凰はおらずとも、名前は心の繋がりを大事にする性分であるし、ときおり真庭忍軍の仲間が遊びに来るため寂しい思いはしていないようだ。


「やあ土井先生」

「えっ、ああ、真庭先生……」

「頼まれていました胃薬を。 真庭の里に代々伝わる秘薬ですからきっと効果覿面ですよ」

「すみません、たすかります……うう……」

「どうかお大事に」


微笑む姿はまるで優しい母のようだが、彼女も真庭の里で忍術を学んだスーパーエリート。
しかも実質のところの頭領である真庭鳳凰の懐刀らしい。
そんな彼女が何故この学園で教師をすることになったか。
それは真庭海亀の長い人生の中でたまたま助けた某忍者との関わりと、学園ではお約束の学園長の思い付きとがマッチした結果であった。


「鳳凰様、名前めは、立派に……立派に教鞭をとって見せます……!この任を終えた際には鳳凰様のなでなでが待っているから……名前は頑張れるのです…鳳凰様……へへ……なでなで……膝枕ぁ…鳳凰様……ああん……ほ、鳳凰さまぁ!!」


なぜ名前が教師役に選ばれたのであろうか。
それは彼女のちょっとした性格の歪みを直すためでもあるのかもしれない。
と、現場を見ていた善法寺伊作は思った。






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