「ご飯だよー」
喚こうと声を出そうとしてももう体力は残っておらず、ヒュー、ヒューと、小さく息が掠れ出るのみ。 拒否ができないままでいると、彼は私のご飯、いいや、ご飯と銘打ってはいるが、あれはただの餌だ。それこそ家畜に与えるような。 いやいやと弱々しく首をふり抵抗するが、砕けてしまうのではないかと思うほどに強く顎を掴まれ、むりやり餌を食べさせられる。 彼は手で掴んだ餌を大きく広げた私の口の中に突っ込み、指でそのまま食道に通らせるように奥へ奥へと無理矢理に押し込む。 小さく切られているとはいえ固形物。飲み込むのは容易ではない。 喉の奥にあたる彼の指と、詰め込まれていく餌で息が苦しくなる。 それでも飲み込まなければこれ以上なにをされるかわかったものではないので、んぐんぐと飲み下す。案の定胸につっかえ、息がしづらい。
「ん、ちゃんと食べたね。お水飲もうか?」
口移しで少しづつ水を飲まされながらやっとのことで完食すると、いつもとは違い、彼が私を膝にのせ、ゆっくりと頭をなぜてくる。
「可愛いかわいい名前……。ずっと一緒だよ」
「…ひっ」
一回、二回となぜられるたびにピクピクと恐怖で肩が跳ねる。 すり、と肩に寄せられる顔はきっととろけるような笑顔なのだろう。
右手では私のお腹をゆっくりと撫で、左手は髪をもてあそびはじめる。
気のせいかと思うくらいささやかに、お腹を押された。
「っ…?な、に……」
「………さっきのご飯、さ…ううん、食材、かな。僕以外も触ったよね、きっと…」
ゆっくりお腹を押していたものが、ぐっ、ぐっとだんだん強めになってきた。 ついさきほど咀嚼し終えた為胃はいっぱいで、餌が消化されてるわけもなく、いまだ胃に残っている。 殴るようになってきた彼の右手に冷や汗が出る。この人は、いったい何を考えているのだろうか。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ。駄目だよ、僕はなんて詰めが甘かったんだ名前のお腹に変なものを!ああ!名前!ごめん、ごめんね!?ねぇ大丈夫、まだ間に合うから、ほら、ねえ、ほら?おえってしようね?」
「あ"っ?!やっ、だ、だめ!ぐっ、うう…!」
鈍い音が体に響く。 彼の拳がお腹の肉に埋まるたび、胃液と共になにかがせりあがってくる。 駄目だ、いけないとわかっていても、強制的に胃から出そうとされているため自分では止めることができない。 ますます強くなっていく衝撃の強さに、胃にあるものすべてを出さなければ殺される、と思った。 彼の右手を自分の弱々しい両腕で掴み抵抗をするが、なんのことはないように殴られ続ける。
口の中がすっぱくなり、きゅっと唇を結ぶと、とうとう食道を逆流した形そのままの固形物達が口いっぱいに広がる。 その勢いに、固く結んでいたはずの口の端からプッと小さく音を立て小さな固形物を含んだ胃液が飛び出した。 恥ずかしさなど感じる暇はなく、遠慮なしに殴られ続けるせいでどんどん食べ物が逆流してくる。 口に溜めていられるのも限界で、ドスッと彼の拳が鳩尾に入ったのと同時に口に溜まっていたものを全て吐き出してしまった。
「うぶぅっ?!がはっげほっげほ、はっ、おぼっぐぶっ」
「全部、全部出して!はやく!」
「あっ!うっ、ぐぼぉっ、ひ、はぁっはあっ、も、やめ…て…死んじゃ、ぁ…っうえぇっ」
殴るのをやめ、もう出せるものは全てだしたのに今度はぐぐぅっと胃のあたりを圧迫される。 胃液で焼け付きヒリヒリと痛む喉に構わず、絡み付く違和感を払おうと咳をしたら赤いものが混じっていた。 彼は目ざとくそれを発見すると、清潔感のあるハンカチで拭い取る。 なんて趣味が悪い。 地面には私が大量に吐き出した、否、吐かされた汚物が静かに広がっているのに。 彼は血液の汚物の付いたハンカチをさも宝石でも扱うかのように懐にしまうと、私の目の前に膝を付く。びちゃり。汚物が跳ねた。 「愛してるよ」とまるで恋人に言うかのように囁き口と口をくっつけられる。 咥内に残った汚物を彼の舌で綺麗に舐めとられ、その舌で体を愛撫された。 勘弁してほしい。
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