「あ、あの、ぁ…その…っ、はぁっ、名前、さん……こ、こん、こんにちはぁ…」

「こんにちは」


長い前髪で顔を隠し、ずるずると落ちてくる大きな眼鏡を震える指で直しながら、やっとのことで名前へと挨拶をした青年と、微笑みながら返す名前。
決して安くはないマンションの、エレベーターでのことだ。

名前は彼氏と同棲していた。
将来有望な立派な社会人であるため、いつでも頼りにされる。
あげくお人好しであるから他人の仕事を引き受けたりして滅多に帰ってくることはない。
それでも名前はいつ帰ってくるかわからない彼氏の為に毎日二人分の夕飯を作るのだ。

いつからか名前は、口に運ばれることのなかった残り物を隣人にお裾分けしていた。
名前のイメージする苦学生の様子その物の容貌に、母性や同情でも覚えたのかもしれない。高級マンションに住んでいるのだからそんなことはないだろうと分かるものであろうが、名前の彼氏いわく「そこがイイ」らしい。

はじめは口も聞いてくれなかった(声が出せなかった、が正解だろうか)青年も、先程のように彼から挨拶をしてくれるまでになった。


「今日は学校だったの?」

「ぇうっ?!あ、ぞっ、げほっ!そう、ですっ」

「そっか、お疲れ様」

「そ、そうでもない、です」

「そうなの?あ、今日お夕飯一緒にどうかな!今日もあいつ、帰ってこないんだって!こーんなかわいい彼女ほっといて、失礼しちゃうよねー?」

「ぇ、あう、そん、ン゛っん゛ん!」

「あはは、困らせちゃった!その…もし、よければなんだけどね」

「た、食べまひゅ!!!」

「えっ?あ、そ、そう?…じゃあほら、ちょうど着いたし、上がって!」

名前とその彼氏の家は、殆どが名前の趣味でできている。
家主がほとんど帰ってこない為、必然ではあるのだろう。


「ソファーに座ってて」

「は、はい」


四人掛けのソファーの、一番端っこに縮こまるようにして座る青年を息子や弟でも見るように目を細め、適当に暖かい飲み物を持っていく名前。

青年の目の前にコップを置くと、何やら青年の様子が可笑しいことに気が付く。
ブルブルと肩を震わせ、いつも以上に俯きながら両手を強く握りしめている。


「…えっと…大丈夫?寒い?」

「はひゅっはひ?!だ、大丈夫ですが、そ、その、ぼぼ、僕相談、そう……相談したくて!僕っ…名前、名前さん、に…!」

「うん、私でよければいくらでも聞くよ?」

「ああ…あぁぁ…!!名前さん…!僕、あの!」

「うん、ゆっくりでいいよ」


人一人分の間を開けて、青年の隣に腰かける名前。
青年の拙い言葉に静かに耳を傾けてくれる名前に、青年は色々なものがぐちゃぐちゃと混ざった激しい感情に襲われた。
こんな自分にも優しくしてくれるという喜びと、そんな名前にこれからしてしまおうかと考えている外道な行動に対しての嫌悪。
そしてなによりも強かったのが悦びだった。
あの、優しくて、可愛らしい、まるで聖母のように接してくれる甘やかな名前を、これから堕としてしまう。
自分のこの手で、何度も名前に対する欲で汚したこの手で!

ばくばくと鳴る心臓を無視して、なるべくゆっくりと、落ち着いた声色になるように丁寧に舌を動かした。


「……名前さん、僕、とても、気にしていることが、あるんです」

「うん、聞いてるよ」

「身体が、変、なんです」

「………えっと病気、ってことかな?」

「いいえ。それは身体の、一部で、起こることで…具体名を、言うと……おちんちん…、」

「おち……、っ!」

「なんですけど…」


はっきりと名前を言えば、わかりやすく目を逸らし、真っ赤になる名前を、青年は眼鏡と髪で隠れている濁った瞳でねっとりと盗み見た。
扇情的な名前の動作に、口が潤う。
言葉を発する度くちゃくちゃと耳に響くのが不愉快で、青年はごくりとそれを飲み下す。
喉の鳴る音を聞いた名前はビクッと反応し、取り次ぐように言葉を並べた。


「その…私、お医者さんじゃないし……そういうのはちょっとわからない、かな…」

「聞いて、くれるだけでいいんです。それで、僕のおちんちん、の話なんですけど、僕、なんだかとても、精子…ザーメンが、とても多くて………………特に、名前さんで、抜いたとき、オナニーしたとき、とか」

「お願い、やめて!!」


聞くに耐えられなくなった名前が立ち上がるのと、青年が遂に耐えきれず笑みを浮かべるのは同時だった。
しかし気丈にも名前は震える声で青年を諭す。


「あ、あのね……普通は、そういうことは、人に話しちゃいけないの!わ、わかるでしょう?!」

「はい、とてもよく、わかります。それで、僕の悩み、解決の仕方わかりますか?」

「なっ…!だ、だから……!」

「聞いてくれるってい、言ったじゃないですか?…嘘だったんですか?嘘、ついたんですか?名前さん……ねえ、名前さん…!!」

「ひっ……!いやあぁ!!」

名前は青年に引き寄せられ、そのままきつく抱き締められる。
熱い吐息が名前の首をくすぐり身をよじるも、青年はより密着してきてそのままぬたりと首筋を撫で上げた。

名前は引きつった声を出し、精一杯暴れるもそのまま押し倒され、青年の細く長い指は縄のように名前の両手を締め上げ、ほとんど筋肉のついていないはずの両足は強く名前を挟み込んだ。

青年は覚束無い右手で自らの股間をまさぐり、いきり立つ肉棒をさらけ出す。
名前には見えていないが、音で理解したのか大きく息を吸い叫び声をあげようとする。
だが青年がそれをさせるわけもなく、だらだらと唾液で汚れた口回りのまま、歯が当たる勢いて名前に口付ける。
無遠慮に口内を舐め回してくる舌を噛もうとするが、先に青年がそれをした。
がぶがぶと、甘噛みと呼ぶには痛いくらいに噛みつかれ、抵抗をすれば殺されてしまう、と名前は思った。

青年の肉棒は既にカウパーでしとどに塗れている。


「名前さんのこと考えると、いつもこうなんですよぅ……すごく困ってるんです……でもザーメンもったいないし…だから、いつも名前さんがくれるお料理にたくさん掛けて食べるんです、名前さんが素手で触った食材に、僕のザーメンがぶっかかってるんだなぁって思うと、僕、何回も、何回も、何回も、おんなじように、出してしまうんです、ザーメン。間接手コキですねぇ、なぁんて、言ってみたりして……っふふ……でも僕、名前さんのおまんこに僕のおちんちん、入れたいなあ、とかあんまり思いません。僕、本当に名前さんが好きなんですよぅ……だから名前さんが幸せなら、いっかぁ、って。名前さんと、彼氏さんの指のサイズとか調べました……僕、指輪さしあげたく、て……僕のザーメンをね、混ぜるんです…指輪に……そうやって作ろうと思って……ふっ、ふふ……彼氏さん、いいですよね、僕と違って、とても名前さんとお似合い、で……僕と違って、頼り甲斐あって、僕と違う……名前さんの愛し方をする………、ああぁ…僕本当にお二人、お似合いだと思って、ます……心、から……ただ、ただ僕も、名前さん好きなんで、名前さんに、僕のたくさんの、ザーメン大切にして、欲しくて……いいですよね?これくらいは……」

「いや……やだぁ!やめてぇ、んぐぅう?!」

「ん、ふぅ……っ今日だけ…っ…今日だけでいいんですぅ……僕のこと、彼氏さんだと……旦那さんだと思ってください…ぁっああぁ………今日この時だけ…名前さんの、僕がぁ…名前さんの彼氏ぃ……あっ!あぁぁぁ…!!」


名前の口に無理矢理ブチ込んだ肉棒を、だらりと舌を出し、犬のように腰をカクカクと動かす青年は、最早正気の目をしていなかった。
何度かスラストしただけで青年は一度果てた。
青年の話に偽りはなく、なるほどその量はとてつもない。
名前は大量に出された精液に苦しさと不快感を覚え吐き出そうとしたが、まるで喉の奥まで精液を押し込もうとするかのように青年のペニスが出入りし、とても吐き出すことは出来なかった。

いやいやと首を振るが、口の回りを精液で汚すだけでなんの意味もない。


「ひぐっ…ぁ゛、んぶ、む、り…!、ゆるひっんぐあぁ!いや、いやぁ!ゆるひてぇ!うぶぅ!」

「あは…。お腹いーっぱい精子飲ませてあげますからぁ…、だから、結婚しましょおねぇ?」

「うぶぅっ!うっ、おっおごっ、うっ」

「名前さんのお口…すごい気持ち良いですぅ……はぁぁっあっ次は、ちゃんとごっくんって、してくださ……っ!ウ、アッ!…はあ ぁ」

「んぶっ?!?んっ、んっぐ、んぐぅ!」

「名前さんのだぁいすきでたまらない旦那様の精子ですよぉ?おいしいでしょう?僕ねぇ、いますっごい幸せですぅ」


うっとりと蕩けた表情のまま両手で名前の頭を抱え、陰毛があたる程奥まで名前の喉にペニスを突き立てて大してピストンもせず大量に精を吐き出す。
青年の陰毛と名前の口許は白く粘性のある液体にまみれている。


「あぁっ!ダメです…っベロ動かしたらっ…ぁ」

「ふぐぅ!んほっ、んふ、んんっ!」


あまりの量に飲み込みきれず、名前の口の端や鼻から精液が漏れ出る。
青年は一度、ずるりと糸を引いてペニスを抜き、名前の鼻に口をつけ、精液を勢いよくすすった。


「じゅるっ、ずっ、ずずっ!」

「ひっ…!んぐぅ?!」


鼻の穴にある精液をすべて舐め取ろうと舌を細くして奥まで舐めようとする。
そして満足するまですすった精液を口移しで名前に飲ませた。
ねっとりした精液は二人の口内に残り、青年はその飲み下されなかった精液を名前の歯列に塗り込むようなキスをした。


「あぁ……やっぱり名前さん好きだなあ…………羨ましいです………」

「ひぐっ、なんっ、なんでこん、な…っ、うっ…!うえ゛ぇ…っ!!」

「泣かないで名前さん………名前……。ふふ、照れますね……でも今は恋人ですから、いいですよね………?」


青年が、精液のせいで白くなった舌で名前の涙を舐めとると、名前の視界は白く濁った。







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