「ガーランドさぁん!」
「…来たか」
ガーランドの心境を的確に表すのならば、来てしまったか、が正解だろう。 名前はガーランドの宿敵であるウォーリア・オブ・ライトに心を寄せるビッチである。体は許すが股は開かない、ビッチはビッチでもこれまた難儀で複雑なビッチである。 そんな名前とガーランドは定期的に会議を行っていた。 ガーランドはその度に己の親父心を煮え立たせ、どうにかして名前の柔肌を触ってやりたいと思ってはいるのだが、いかんせん根が紳士なため、未遂どころかそんな素振りさえ出したことはない。 だいたいにしてガーランドには遠くの異世界に想い人がいたはずなのだが、遠くの花より近くの花。やはり欲には逆らえないということだろうか。
「ウォーリアさんについて語る定例会議も第10回を迎えることができましたね!」
「全くめでたくはないな」
「きりのいい10回!と、言うことで!」
「なにが、と言うことでなのかわからんが」
「そろそろウォーリアさん不足で死んじゃいそう…」
名前は自前のウォーリアブロマイドを取り出すと寂しげながら恍惚としてそれを見つめる。 この光景も過去9回の会議で見慣れたことだった。
「こうして紙面のウォーリアさんを見つめることにもいい加減飽き飽きですよ」 「いつも思ってたがなぜそんなによれているのだ?」
「!!そ、それは…」
回を追うごとにだんだんと水気を含んだかのようによれていくブロマイドにガーランドは軽い疑問を持っていたが、今まではなんとなく紳士らしく理由を察し黙ってはいたのだ。 しかし10回目では確実な真実を知りたいと思う気持ちが勝り、気がつくと口から言葉が滑り出していた。 これもまた親父故のスケベ心が生み出した可愛らしい探求心である。
「(なんとなく予想はついているが)」
「ううん……、ま、ガーランドさんにならいいですかね。あのですね……あっ!その前に!マティウス様にはナイショですからね!」
「ふむ」
「あのですねぇ!もう私我慢できなくって!最初はウォーリアさんの顔みるだけだったんですけど、ほら、オナニー中ってトランス状態じゃないですか!気分が高まっちゃってマン汁をちょこーっとだけウォーリアさんの素敵なお顔に擦り付けたんですね?そしたらなんかもう、もうっ!ゾクゾクしちゃって!あーん思い出したら濡れてきちゃったぁ!あとはウォーリアさんのお顔で直接擦ったりしたりして!やだー!なにいわせるんですかガーランドさんのえっちぃ!あとあと、私の汁まみれになったウォーリアさんのご尊顔を、ぺ……ペロペロしてみちゃったり!きゃあ〜!」
「(やはりな)」
理由がはっきりすると、それまで思春期のバッツのように若い娘に盛っていた自分にサッと引いた。 ガーランドの心中は(わしはこんなに若くはない)と言う想いでいっぱいだ。 そしてもうひとつ。今までは名前にウォーリアはやめておけ、とさりげなく伝え続けていたが、この際もうどうにでもなれ精神か、はたまた後は若い者同士で精神か。
「あやつに直接言ってやれば喜ぶやもしれぬぞ」
「えー!やだ引かれちゃいますって!」
自棄に近いものだろう。 もう早くくっついちまえ、と。 しかし名前はウォーリアがまるで王子か何かのように思っている節がある。それだけはいけない。 ここまで乗り掛かったのだ、名前には真のウォーリア・オブ・ライトを教えなければならないと密かな熱意に燃える。 奴は凛とした立ち居振舞いとは真逆の、なぜコスモス側にいるのか不思議なくらいの性根の持ち主であると。それを踏まえて尚ウォーリアを好きだと言うのならばいいだろう。 つい先程までは名前のことを女として見ていたのに、まるで名前の親のように、今度は名前の幸せを願う。
男の本性はどうあれ、ガーランドは、根がどうしようもなく紳士であった。
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