追記#name#は泣いた。
揺れる二対のチョモランマをたゆんたゆんさせて泣いた。
「お願いします……おっぱいを触らせてくださいっ!!」 「お、お願い竜ヶ崎くん、頭を上げて、土下座なんてしないで……」
日差しの届かないような薄暗い廊下で、すわ不純異性交友だろうか。なんともけしからん。 全国けしからん連盟のおじさま方がこぞってスタンダップするが、まあ一先ずここはご着席を願いたい。
西には土下座をするブーメランメガネの君、竜ヶ崎怜。対する東には、両胸に堂々とそびえ立つチョモランマを揺らす#name#。
怜から呼び出しを受けたとき、#name#は密かに喜んだ。 なぜなら#name#は、怜と友人関係を築いてからというものずっとひたむきに怜を想い続けていたからだ。 今の距離感を詰めることを恐れてとうとう学年が上がってしまったのだが、ここに来て、まさかの想い人から歩み寄って来てくれたのだと、胸の内を熱い気持ちでいっぱいにしたのだった。
だが#name#を一番喜ばせることが出来るのが怜なのであれば、#name#を悲しませるのもまた、怜だった。
「どうして、私の胸を、そんなに」 「は、話すと長くなるのですが……」
説明してくれた原稿用紙三枚分くらいの内容を要約してみると、とにかく「渚くんに女の人のおっぱいを触ったことがないのをからかわれた」ということだった。 ちなみに彼のおっぱいカウントは小さな頃に触った姉のおっぱいだけである。
だがそんな事実を知らない怜は、この歳でおっぱいを触ったことがないのはやや珍しいことなのだと勘違いしはじめる。 そして「僕もおっぱいを触ってみたい」という気持ちは日に日に増していった。しかし怜には恋人がいない、はて困った。そんなときに見つけた当てが、#name#なのだった。
#name#とは友人だ。少しの恥なら見せられるし、もしかしたら友人だからとおっぱいを触っても許されるかもしれない。さらに#name#はいい人だ、頼んでみよう、そうしよう。
「でも、それなら……私じゃなくても、松岡さんとかに頼めるよね?」
#name#は、少し不安そうな瞳で怜を見下ろす。 #name#の瞳から零れた涙が床に弾けた。それを見て怜は、ずっと下げていた頭を上げると真っ直ぐに#name#を見つめ返す。太もも見えた。
「……いえ、僕は#name#さんだからこんな事を頼みました」 「わ、私だから……?」 「#name#さんにしか、頼めません」 「私にしか……!」 「貴女ならきっと、僕のこんな邪な思いも受け止めてくれると、思ったから……」 「……りゅ」
──竜ヶ崎くんが、私をこんなに信頼してくれていたなんて!
#name#は感激から涙を流す。
恋人じゃなくてもいい、竜ヶ崎くんと私の間には、もっと確かな絆があるんだ……!
怜の熱いまなざしが、#name#を真っ直ぐ射抜く。 きりりとした柳眉、引き結んだ唇。美しい虹彩の中に悶えている#name#を映り込ませながら、まるで試合前のような、熱く真剣な瞳をしている。 溢れる熱意を一心に受けてしまった#name#は怜から目をそらしつつ、思わず「おっぱいどうぞ」と呟いていた。
場所を移し、同校舎空き教室。
おしりのあたりで指を組み、胸をやや突き出している#name#と、両腕を不自然に持ち上げて山に手のひらを向ける怜。指はなぜかピッチリとくっついていて、まるでパワーでも送っているかのよう。
「で、では……。ゴクリッ。さ、触りますよ……」 「う、うん」
怜がじり、と半歩分の距離を詰める。 近付く距離に肩とおっぱいを揺らした#name#だが、後退はぐっと堪えた。
「(あう……わ、私本当に、竜ヶ崎くんにおっぱい触らせちゃうの? 好きって言ってないのに、お付き合いもしてないのに、体の関係なのっ?)」 「(む、胸……そしておっぱい……凄く大きい……そしてとてつもなく揺れている……さ、触ってもいいのかコレ、本当に?)」
思わず眼鏡の下から#name#を窺うと、パチンッ。目と目が合う。 耳まで赤くした#name#が怜を見上げていた。
「ひゃ、わわっ」 「す、すみません」
#name#は反射的にまぶたをギュウと閉じ、左、右の順番に踵を一歩後ろに下げた。 ガタンと机にぶつかって膝が折れる。
「あ、危ないっ」
#name#の二の腕を怜が掴み、転倒を防いだ。
このあとは特になにもなくおっぱい触って終わりますよ
2015/02/02
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