二十分の恋 | ナノ

四日目





あれ以来、僕はバス停に早く来るようになった。冬はなかなか起きれなかったから、家族はとても驚いていた。

「おはよう」

白い息が昇っていくのを眺めている彼女に声をかける。今日は彼女が先に並んでいた。
何となく、彼女も早く来るようになった気がする。

「あ、おはよう」

マフラーに隠れた口元が笑みを浮かべたのが分かった。

「今日は土曜日だけど、部活ですか?」

相変わらず眠たそうにまばたきをしている彼女に聞く。
確か、×××女学院は土日は休みだと乾が言っていた。それから黒いセーラー服は高校生のだとも。

「ううん、委員会の用事」

そっちは部活?と聞き返され、頷いた。

「他校と練習試合があるんです」

半年前と同じだ。

「あ…」

はっ、と何かを思い出したように彼女が声を上げる。

「どうかした?」

「え?あ…ううん、何でもない」

ふるふると首を横に振る彼女の動作が可愛らしく、思わず口元が緩んだ。
バスが遠くに見える。車の通りが少ないから、すぐに分かった。

「……」

彼女はいつもの席に座り、僕もいつもの席に座る。
しばらくしてから、彼女はスクールバッグから紙を取り出して眺め始めた。紙の表紙には冬季委員会何とかって書いてある。何の委員会に入っているのだろうか。
そう考えていたらいつもの老婆が乗ってきた。老婆が座ったのを運転手が確認してすぐ、バスは発進した。











四日目













≪次は××団地前ー、次は××団地前ー≫

車内アナウンスで目を覚ました。彼女はもう降りてしまい、横断歩道のところに立っている。
ぼんやりと彼女を眺めていたら、バスが彼女の前を通り過ぎる際、彼女は僕の方を見て手を振った。

「ぁ…」

反射的に手を振り返す。
いつもは伏せがちな彼女の瞳は真っ直ぐ僕を向いていた。黒目がちなその瞳を思い出して、心臓が跳ね上がる。
何となく、今日の練習試合は全勝出来そうな気がしてきた。

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