二十分の恋 | ナノ
三日目
今日は普段より早く来た。バス停にはまだ誰もいない。
白い息を眺めつつ待っていると、後ろから足音がして振り返る。
「ぁ…」
黒いコートに白いマフラーを身に着けた彼女が僕の隣に並んだ。
「…おはよう」
黒目がちな瞳が僕を真っ直ぐに映す。
「おはよう、ございます」
思わずどもってしまい、マフラーに隠れた彼女の口元が笑ったのが分かった。
靴は底が高くないローファーだが、目線は殆ど一緒だ。彼女は意外と背が高かった。
バスは、まだ来ない。
彼女の吐いた白い息が空を昇っていくのを見て、彼女の様子を横目で確認する。自分が吐いた白い息を眺めながら、眠たそうにまばたきを繰り返した彼女に少しだけ微笑んだ。
「今日も寒いですね」
眠たそうに欠伸を一つした彼女が、眉尻を下げて微苦笑する。
「そうですね」
そう言ってすぐ、鼻の天辺を赤くした彼女がまた一つ欠伸をこぼした。口元を隠す白い手は指先が赤く染まっている。
「バス、来ましたね」
眠たそうな彼女がそう言いう。
「中、ちゃんと暖房入ってるといいですね」
頷いてからそう言うと、彼女も頷いた。
バスはようやく来たけれど、バス停には未だ僕と彼女以外の人は誰もいなかった。
三日目
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