沢田家長女 38
◇
獄寺達と逸れた綱吉と名前は、アイリス率いる死茎隊と応戦していた。
「やめとけボンゴレ姉弟。死茎隊は今のあんたらが敵う相手じゃない」
諦めたようにスパナが言う。変わり果てたソレはミルフィオーレの人体覚醒部が作り上げた作品である。スパナとは畑違いであっても同じ技術部、その性能については折り紙付きだ。
「やってみなきゃ分からない。スパナ、お前はコンタクトを完成させてくれ」
綱吉がスパナを庇うように攻撃を防ぐと、そのすぐ目の前で化け物じみた咆哮が上がる。名前が炎を纏わせた手刀で死茎隊の一人の腕を切り落としたのだ。けれど、炎で焼き切ったその切断面からは再び腕が生えてくる。
「出た、雲の肉体増殖だ。おそらく切り落とすのは悪手だぞ、ボンゴレの姉」
「がっ……!」「つっくん!?」
増殖による伸縮で肉塊が鞭のように綱吉へと叩きつけられる。拘束された隙を突かれた綱吉はまともにそれを喰らい、隣の部屋へと吹き飛ばされた。
それを追う名前の身体に伸ばされた肉塊がロープのように巻き付く。
親であるアイリスの嗜虐性が強く反映された甚振るような攻撃に綱吉と名前は防戦で精一杯だった。
「だからムリだって……」
「いいや、スパナ。あいつらは必ずやり遂げる」
スパナはキング・モスカとの戦闘情報のみで勝率はないと断言したが、リボーンは二人の勝利を確信していた。
「キング・モスカとでは二つ違う所があるからな」
「違う所?」
スパナがリボーンを見下ろす。リボーンは一つ頷くと「戦闘経験と機械ではない人間が相手という点だ」と続けた。
高められた集中力と短時間での濃い戦闘経験は、二人の戦闘能力を今までとは比べものにならない程に引き上げていた。
そして何より、相手が機械ではなく生きた人間ということは、綱吉と名前に大きなアドバンテージをもたらす。
機械にはない生身の人間だからこそ、動きや考えには予兆があり、今の二人はそれを感じ取ることができる。
「ボンゴレの血統に継承される見透かす力≠ワたの名をーー超直感」
「さぁ、ひねっといで。下僕ども」
毒花のような笑みを浮かべたアイリスが再度雲の炎まとう鞭をしならせると、人型の兵士は今度こそ異形へと転じた。
20230930
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