短編 | ナノ

沢田家長女 14


 ◆



 ーーE'la nostro dolore tra le fiamme.
     炎に刻まれた 我らの嘆き



 ◇


 沢田綱吉がザンザスに勝利したその夜、沢田名前は姿を消した。
 忽然と消えた少女の話は広まる事はなく、翌日に見つかった夥しい血痕は混乱を防ぐという名目で内密に処理されることとなった。
 そして同日、十年バズーカに被弾したリボーンも入れ替わりを確認出来ないまま姿を消す。
 沢田名前、リボーン両名の捜索に外出していた沢田綱吉とその守護者達も十年バズーカに被弾。未来へと転移したのは、さらに翌日のことである。


 未来編 Bad END1/Lost flame



 ◇

「そん……な……」
 散り散りになっている仲間。安否の分からない両親と友人。巻き込まれて亡くなった多くの無辜の人々。
 未来で起きている悲劇に、綱吉と獄寺は理解が追いつかなかった。どうしてそんなことになってしまったのか。飲み込む時間を与えるように言葉を止めた山本とリボーンに、綱吉は震える声で尋ねた。
「じゃ、じゃあ……姉さんは……?」
 現時点で過去では行方がわからなくなっていた名前。両親についてリボーンが話した時、姉の名前は出なかった。
 期待と不安に綱吉の瞳が揺れる。リボーンも綱吉も、未来では亡くなっている。名前もまたそうかもしれないが、少なくとも過去に戻った際に探す手がかりを得られるかもしれなかった。
「名前さんは、亡くなってるよ」
「オレは……十代目だけでなくお姉様まで……!」
「やっぱり、ボンゴレ狩りで……」
「いや、そのせいじゃない」
 山本は言い淀むようにそこで言葉を止めた。
「十年前……リング争奪戦の時に、先輩は殺された」
 後頭部を思い切り殴られたような衝撃が綱吉と獄寺に走った。
「あれから雲雀は並盛を出て世界中飛び回ってるし、ツナはずっと難しい顔してた。ま、当然と言えば当然だよな。……でもな、オレは、だからだと思ってるんだ。未来のお前は結局、一度も口には出さなかったけど。ツナがボンゴレリングの破棄を決めたのも、ボンゴレそのものを解体しようとしたのも」



20230811

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