短編 | ナノ

沢田家長女 13


未来編
 日本支部にて
 ◇

「そん……な……」
 散り散りになっている仲間。安否の分からない両親と友人。巻き込まれて亡くなった多くの無辜の人々。
 未来で起きている悲劇に、綱吉と獄寺は理解が追いつかなかった。どうしてそんなことになってしまったのか。飲み込む時間を与えるように言葉を止めた山本とリボーンに、綱吉は震える声で尋ねた。
「じゃ、じゃあ……姉さんは……?」
 両親についてリボーンが話した時、姉の名前は出なかった。もしかしたら綱吉やリボーンと同じように入れ替わっているかもしれない。
 不安に駆られる綱吉とは異なり、未来の山本は一瞬呆けたように目を瞬いた。
「まさか姉さんも……」
「あ、あぁ悪い。ちょっと意外でな」
 思っていたものと違う反応に綱吉は首を傾げる。姉の話題が意外、とはどういうことなのか。笹川兄妹までは行かずとも良好な姉弟関係だと自負している綱吉は、にわかに過ぎる不安に眉根を寄せた。
「先輩は……七年前に並盛を出て以来、ツナとも絶縁状態だとは聞いてる」
「え、絶縁……?」
「七年前と言うと、高校卒業くらいだな」
「そっか……じゃあ過去はまだ先輩がいる頃だな」
 山本は感慨深そうに呟くと、懐かしむように目を細めた。
「未来のお前らは探さなかったのか?」
 進学にしろ就労にしろ家を出てもおかしくはない年齢である。とは言え、過去の時代では封印が解けついに名前も炎を灯すようになったばかりだ。その特異性と立場上、未来のボンゴレ十代目幹部か門外顧問として席が用意されるはずである。
 少なくとも、居場所が完全にわからないということにはならない筈だとリボーンは考えていた。その考えを山本は首を振って否定する。
「探せなかったんだ。オレ達守護者は接触を禁じられてたし、そもそも先輩はリング争奪戦が終わってすぐに転校した。……そういや、あの頃のツナはいつも親父さんに怒ってたな」
 どうやら納得の上での出来事ではない、ということだけは理解できた綱吉がリボーンへと目を向けた。
「名前にそんな話は出てねーぞ」
「……ま、そんなんで先輩の安否はわからねぇ。ただ、事が事なんで、あちらさんにバレないようこっちも捜索してる」
 重い沈黙が降りる。最もボンゴレ狩りが盛んなイタリアにいる両親にとっくの昔に消えていたという姉。リボーンとの再会の喜びも消し飛ぶほどの衝撃に、綱吉は目の前が真っ暗になるようだった。
「十代目……」
「大丈夫、とは言えないけどさ。先輩、あのヒバリの目すら掻い潜って並盛を出たんだぜ。凄いよな」
 目に見えて落ち込む綱吉を慰めるように山本は続ける。
「ヒバリさん……?」
「並盛と言えば昔からヒバリだろ。そのヒバリすら先輩が消えたこと知らなかったんだと。……だから、きっとどこかで生きてる」
 血眼になって探していた雲雀の捜索網を掻い潜るほどの隠密力と忍耐を、未来の綱吉は信じていた。
「生存の見込みはないと判断した奴らに、未来のお前がそう言ったんだ」



20230807

ノーマル√で起きたことは誰も知らないし雲雀もわざわざ語らないので勘違いが加速する。



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