短編 | ナノ

沢田家長女 04


高3卒業直前の二人



 さよならを告げる彼女の声に飛び起きた。拭いたはずの汗で、シャツはじっとりと湿っている。腕の中には今も、疲れ果てて眠る彼女の姿があった。
 鳥の声もしない、日付が変わる頃。月に照らされた青白い顔を眺める。呼吸は浅く、無理をさせたからか、眠りは深い。
 もうきっと、放してやれない。腹の底で眠らせていた独占欲が溢れ出る。一度しか見たことのない彼女の父親はともかく、あの老人は気付いていたのだろう。
 彼女の箱庭を守ることが出来ればそれで良かったと思っていたのに。あれ程瞼に焼き付いて離れなかった、幻想の中の少女をかき消す。そっと服を整えて、起こさないよう抱き上げた。
「…ああ、哲かい。明日だけど、予定は変更する。こっちで準備を進めてくれ」
 自宅ではない、まだ誰も知らない秘密基地へ。
 炎を灯し、記憶より少しだけ大人びた少女を抱え鳥居を潜る。
 隠してしまえばいいと、男の耳元で誰かが囁いていた。




寝た後、先に目覚めてひっそり寮へ帰るのがノーマル√とするなら、今回は雲雀が先に目覚めていたらのif。
この展開だと行方不明扱いで風紀財団の最奥、雲雀の私室にある寝室の更に奥で一生囲われて過ごすことに。彼女も囲われることに異議はない。
未来編では秘密の存在だったものの、彼女も過去と入れ替わり、過去のボンゴレがパラレルワールドであると発覚したことでようやくネタばらし。


20220310

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