僕らの終焉紀行 | ナノ

道化師の最期




小学校低学年の時に両親が死んでから親戚中たらい回しにされ、結局最後は施設に預けられた僕は、ついに中一の冬、その施設から逃げ出した。

「……本当、何やってんだろ僕」

ふと気がつけば嫌な思い出も友達との思い出も残る、この町に来ていた。
雨の中走りつづけた足は酷使し過ぎたらしく、ずきずきと痛んで動かすことすら億劫になる。身体が鉛のように重く感じ、それに耐えきれずその場にへたり込んで時々光る暗く濁った空を見上げた。
人に生まれた限り、どうせいつかは死ぬ運命だ。死なんて、それが早くなるか遅くなるかの違いだろう?

「………ばーか」

そう思って激しい音を鳴らす空に向かって呟く。
雷って、昔は空の神様が鳴るから神鳴りとか言われてたんだよね。それじゃあ空の神様に向かってバカとか言った愚かな子供を、その光の刃で貫いて殺してみせてよ。まあこんなガキ如きのやっすい挑発に乗るほど神様って短気じゃないよな、と自嘲気味に笑って言ってみる。

「…大丈夫ですか?」

心配なんて一ミクロンもしてなさそうな、笑いを含んだ声と共に、突然番傘が視界いっぱいに広がった。続いてストライプの帽子と金髪に和服というミスマッチな格好の男が視界に入ってくる。

「……だれ、あんた」

少し舌っ足らずな喋り方になってしまった。長時間、傘も差さずに土砂降り雷雨の中いたせいか風邪を引いたらしい。頭も痛いし意識が朦朧としてきた。

「アタシですか?アタシは、しがない雑貨屋の店長ですよ」

鋭い光を宿した瞳が真っ直ぐに僕を見つめる。

「あなたを助けてあげます。よかったら、アタシと一緒に来ませんか?」

―――そこよりマシだと思いますけど。

「そこ」があの施設のことか、雨に濡れた地面のことなのかは僕には分からなかったけど、半強制的なその言葉に僕は迷うことなく差し出された手を取った。
今思えば、あの人は全部知ってたうえで行動してたんだと思う。

僕が初めて喜助さんと出会ったのは、そんな冷たい雨が降る夜のことだった。











道化師の最期









たとえ偶然でも最初から仕組まれていたとしても、あの日あなたと出会えてよかったと心から思う。
あなたに拾われたからこそ、僕はもう、ピエロにならなくていいのだから。

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