僕らの終焉紀行 | ナノ

身体だけでも良いよ







それはまだ、山本もいなかった昔々の話。
私はただ淡々と輪廻と呼ばれ歯車として、その空間に満ちるものの塊であり、ただ其処に存在しているだけでした。それでも争いが絶えないその混沌としていた空間で、私は霊子、或いは神子、或いは神と、一度死した者に崇められていました。再び、生者の世界に生まれ落ちることが出来るようにと。
私、死に神と呼ばれていました。
そして私はその空間に光と闇を作り出し、魂を正と負に分けました。続いて大地と空を。最後に雨を降らせました。私の知っている範囲ではありましたが、出来る限り生者の世界に似せ彼らを其処へ住まわせました。生者と同じよう、規律を守らせ望めば忘れてしまった常識というものも教えました。
しかし私が未熟故に至らないところもありました。
私から遠ざかれば遠ざかる程に闇が強くなり、魂や霊子を主食とする強いモノ…つまり負の魂が強まってしまうのです。次々と喰われていく正の魂に請われ、わたしは絶対的に彼らを守る事が出来る場を作りました。そしてその絶対的な空間を中心に、私の加護を受ける空間を広げていきました。守る為に、私は土地から離れることは出来なくなってしまいましたが、それでも私は構いませんでした。
ただ一つ、彼女の存在を除いて。

その頃、人の姿を得た正の魂達は他の魂を愛する事を覚え、家庭を持つ者が出るようになりました。
元来、此処は彼らが再び輪廻の歯車に巻き込まれる為の場所です。此処で生まれた新しい魂は、輪廻の歯車に巻き込まれる事が出来ない形をしていました。
このままでは何れこの循環する空間は魂で溢れてしまいます。だから私はこの空間を、負の魂と正の魂が存在する空間の境目を曖昧にし、生者の世界と同じ弱肉強食の空間にしました。
しかしそれでは負の魂と正の魂の均衡が崩れ、その影響は生者の世界にまで広がってしまいます。だから私は、私の変わりに動き均衡を保たせる代行者を作りました。
それが、彼女です。












身体だけでも良いよ













(それが全ての始まり)

- 57 -

|




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -