僕らの終焉紀行 | ナノ

天国と地獄の間







目の前には言ノ葉がいた。
いや、正確には言ノ葉に似た少女が、氷の中、胎児のように丸くなって眠っていた。

「言ノ葉…?」

≪…見つけてしまいましたか≫

隣に言ノ葉が現れる。

≪あなたを導いたのは、その文字ですか?≫

言ノ葉の問いに答えるように、手の甲に張り付いた文字が光った。

≪物事を区別して知り、見分ける。…あなたらしいですね≫

隣の言ノ葉を見ると、読めない表情をしている。

「で、結局これはどういう意味なの?」

僕の問いに、少し躊躇った後言ノ葉は口を開いた。

≪…わたし、ですよ≫

そう言って、氷の表面に手を這わす。

≪山本もまだ存在しない、数えるのも億劫になるくらい昔の、まだ神と呼ばれる前の…最初の、わたしです≫

懐かしいものを見るような、憎いものを見るような、そんな、複雑な表情。

≪わたしで最後にするはずだったんです。でも、彼等が…、…あの人に似ていたあなたの最期が、悲しいものだったのが、嫌だったんです≫

長い睫毛に縁取られた、黒目がちな瞳が僕を見る。

「…言ノ葉…何を、言って…」

≪――、――ごめんなさい、識≫

泣きそうな顔で、ごめんと謝る言ノ葉。す、と手が額に触れた瞬間、意識が急激に浮上し僕は目蓋を開けた。














天国と地獄の間














(ずっと続く悲しい物語)(ここは)(言霊の幸ふ国)

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