僕らの終焉紀行 | ナノ

私の名前を呼んでください







梵字、数字、漢字。くるくると、様々な文字が回転する。

≪初めにも言いましたが…わたしは厳密に言えば斬魄刀ではありません。似て非なるものです≫

幾何学模様になったり、円を組み合わせた複雑な模様になったり。

≪ですから、斬魄刀には無い能力もあります≫

今回は、それを習得してもらいます。そう言ノ葉が言った途端、浮かんでいた文字の動きが止まった。

「それで、僕は何をすればいいの?」

≪この無数にある文字の中から一つだけ、選んで下さい≫

「選ぶ…?」

探すのではなくて、選ぶ。

≪はい、選んで下さい≫

あなたなら、選べるはずです。そう言って言ノ葉は、透けるように消えた。

「いや、わけがわからないよ言ノ葉さん…!!」

言ノ葉が消えた途端、選んでーとばかりにわらわら群がってくる文字の群れに全力で逃げながら、どこかに消えてしまった言ノ葉に向かって叫んだ。いや、本当にどういうことなんだ言ノ葉さん。

「う、わっ…」

突然ぴり、と頬に刺激が走り血が伝う。何かが頬を掠めたようで、周りを見ると何かが囲むように周囲を飛んでいた。

「漢字…?」

刃か刀か、そこまでは見切れなかったけれど、そんな形の文字が手裏剣のように回転している。

「嘘だろおい…」

後ろを振り返れば矢という文字が飛んで来ては他の文字に刺さり消えていって。
それにしても漢字が多い。平仮名や片仮名は見当たらないけれど、元々が漢字を崩したものだから、そういったものは無いのだろうか。

「ん…?」

走っていたら、手に何かがくっ付いているのに気が付いた。

「…識…?」

知識の識。僕の名前でもあるその字は、まるでついて来いとでも言うように手の甲から剥がれ、宙に浮きくるくると回っている。

「ついて行けばいいの…?」

もう字の群れは追って来ていないが、先程までの事が軽いトラウマだ。
それにしてもあの字は何かあるのだろうか。少し離れた周りに他の字の群れがあるけれど、先程のように近付いては来ない。まああの群れには近付きたく無いから良いのだけれど。でもそうなるとあの字を追って行かなければならない。
進まなければと、覚悟を決めて字が消えて行った先に一歩、踏み出した。












私の名前を呼んでください













(眩い光に包まれ)(再び目を開いた時)(目の前には――…)

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