僕らの終焉紀行 | ナノ
過去に縋りついている
術を織り交ぜた睡眠薬。分量を間違えれば死に至る危険もある毒薬を、識に飲ませた。
「…すまない、識」
倒れた識が手を伸ばす。俺を見る虚ろな目が、俺を責めているようで。目蓋を閉ざせば、涙がこぼれ落ちた。
「これで、本当に良かったんですか?」
背後から浦原喜助が問いかけてきた。
「識にはもう、戦わせたくない」
今まで生き残れたのは、二人一緒だったからだけれど。
「アタシが言える事でもないんスけど、それはアタシも同感です」
もっと、普通の高校生として生きて欲しかった。
「あの子は黒崎サンと違って淡白ですから、今回の件だって巻き込まれずにいられた筈なんですよ」
ぽつりぽつりと、言葉を噛みしめるように語ってゆく。
「元々器用な子で、基礎的な事は黒崎サンより上ですから、おそらく拒めば貴方を一度退かせるくらいは出来た筈なのに…」
それでも、自ら進んで俺に着いてきた。
「……、…さあて、そろそろアタシたちも動き出しますか」
大きく息を吐いて、浦原喜助が立ち上がる。
「眠り姫が目覚める前に、ちゃちゃっと終わらせちゃいましょう」
過去に縋りついている
(もう、小さな子供ではなくなってしまったと)(呟かれた言葉は)(重かった)
- 53 -
← | →