僕らの終焉紀行 | ナノ







殆ど吹っ飛ばされた識の身体を落ちないように掴み、残った力を振り絞って響転で平地へ転がり込んだ。

「………本当に、救いようのない馬鹿だな」

自我も自覚も無くとも、好意を寄せていた相手に血を流させたのは理解出来たのか、黒崎一護がそれきり動きを止めたのをいいことに自分にもたれかかる赤く濡れた身体を抱きしめる。
己の左腕、左足と共に吹き飛んだ小さな身体は、再生することなくただ赤い液体を流し続けていた。

「俺には超速再生があると知っていただろう」

親指で血の付着した頬を少し強めに拭う。それでも、ぴくりとも動かないそれに、胸に空いた孔が刃で引き裂かれたように痛んだ。

「ぁ……お、れは…」

虚化したまま響転で追いかけてきたと思ったらどうやら元に戻ったらしく、仮面が割れたせいか、コイツの血を見たせいか、動揺しながら後ずさった黒崎一護に言い様のない感情が湧き上がる。

「しっかりしろ黒崎!!」

「俺が、俺が識を…」

下半身が吹き飛び血まみれとなった、変わり果てた識の姿を見て呆然と呟く。
そうだ。お前が俺の胸を裂き手足を切り落とし、そして識を殺した。

「嘘だ…そんな、俺がっ…」

「全て真実だ。…フッ、少しばかり、考えていたんじゃないのか?手に入らないのならいっそ、」

「黒崎くんっ!!」

「やめろ黒崎!!」

殺してしまおうか、と。と言った直後、胸ぐらを掴まれ投げ飛ばされた。

「てめぇ、よくもそんな事を――――」

「なら何故殺した」

「―――っ!!!」

激しい胸の痛みの中、絞り出した声は自分でも驚くほど震えていたのが分かった。

「っ、あれは、」

「俺じゃなかった、だから仕方ない。そう言いたいのだろう?」

図星だったのか、肩が大きく揺れ刀を持つ手が震えた。
くそ、どいつもこいつも甘ったれている。

「ふん…別に貴様だけを責めている訳じゃない」

そうだ。そもそも女がもっと強ければ、最後の最後で黒崎一護に助けなど求めなければ…奴が虚になることも、識が死ぬこともなかったのだ。
もちろん守れなかった俺にも非はある。が、どうしてもこいつらを責めずにはいられなかった。

「……識の敵討ちをしたい所だが、」

滅却師に支えられている黒崎一護を一瞥し、上半身だけ残った識の身体を片手で抱き上げる。

「今の俺の最優先事項は、コイツとの約束だからな」

識のおかげで未だ動き続ける自分の心臓と、識の動かない心臓の位置を正確に重ねた。

「…お前、何して…」

奴らが口出しする暇なく、既に再生された左腕で識の心臓ごと、俺の心臓を鷲掴みえぐり出す。

「ひっ…!」

誰かが泣き出したのが気配で分かった。
心臓が無くなったことにより、早くも羽が灰となり崩れ去る。

「やめろウルキオラ!お前一体何をすんだ!!」

「貴様如きに解るまい」

そう、これはただの独占欲。

『独りになりたくない』

そう淋しげに笑った識の顔が脳に蘇る。

『俺が死ぬ時は、お前も道連れだ』

それと同時に、いつか識に話した言葉も蘇った。

「そうだ…人間などに、」

俺の識は、ワタサナイ――――。


全てが灰になる直前、歪んだ笑みを浮かべて双つの心臓を握り潰した。





最期のその後もずっと共に











俺とお前に終わりなど存在しないのだから。








++++++++

本当にEND
表現しきれてないけどやってる事は結構グロい。
後味悪くてごめんなさい。
心臓云々はなんかで読んだ呪いだったような…色々記憶が混ざって別のものになった感がかなりありますが、確か来世も一緒になれるようにだったかな。まあいいや、そんな感じです。

実はこれアニメ見た日の夜発狂しながら書きました。
とりあえず、…ウ、ウルキオラアアアアアア!!!!!!!
あんた、ほとんど敵無しってぐらい強かったじゃないかああああ!!!
あれか、これはあのパターンか。どんなに強くても主人公じゃないから負けるあのパターンなのかっ!!!


20100601
20110221移動

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