僕らの終焉紀行 | ナノ
悪魔の鼻歌
「……何を、考えとるんです?」
先程から愉しげな顔で笑っている主君に、訝しげな顔をして尋ねる。
正直、気持ち悪くて仕方ない。
「ギン、破面は本来仮面が全て無くなり胸の孔が塞がってようやく完成なんだよ」
へぇ、と適当に相槌を入れる。
「だが、崩玉では完全な完成には至らなかった」
自分の適当な相槌は気にしてないのか、そもそも聞こえていないのか藍染は口元に弧を描きながら自分を見た。
「虚の孔は何故塞げないのか。…ギン、何故か分かるかい?」
「…さあ。ボクにはさっぱりですわ」
普通の死神は虚の孔なんざ塞ごうと思わない。
頭の良い死神の考えてる事は分からないな、と思っていたら、欠けているからだよ、と何時ものやや演技染みた口調で笑った。
「崩玉でさえ補えなかったもの、それはおそらく心だ。彼らは総じて心を持たない。知っている者もいるようだが、知っているだけでは駄目だった。」
にやりと笑って、また自分を見る。
「知っただけで、手に入れたわけではない。満たされていないからだよ。その心が。…私は、完成された真の破面を見たい。心を手に入れた事によってどのように変化するのか。それが見られるのなら、多少の犠牲は厭わないよ」
たとえ十刃が欠けようとも。
そう言って愉快そうに笑った藍染は、悪魔のような顔をしていた。
「まあ、これは感情と心を別物と考えた場合だけれど」
「…」
でも、彼らに何かしら欠けているモノがあることは事実だ。
実験台にされてしまったであろう2人の姿を思い浮かべ、自分はただ可哀相にとしか思えなかった。
「―――さあ、入っておいで。…よく来たね、ウルキオラ」
自分と同じで狡いあの子は、多分藍染の考えに少しだけ気付いているのだろう。同じように此方に連れて来られた少女と似た容姿の少年を思い浮かべながら、前と比べると顔つきが少し変わった青年を見て静かに目を閉じた。
悪魔の鼻歌
(いつだって狡い生き方しかしていないから)(たとえ知ってたとしても)(ボクとあの子)(操り人形なのは)(結局どちらも同じ)
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