僕らの終焉紀行 | ナノ

殺意と






余計な事を、言ったと後悔した。
井上が自分の意思で裏切るなんてあり得ないのに。
俺が、井上が治してくれた、なんて言ったから。

「太陽は我らの手に堕ちた」

おまけに識とも連絡が取れない。
浦原さんは、もしかしたら井上と一緒かもしれないと言っていた。それはつまり、識もアイツに捕まったということだ。
浦原さんは識に関しては心配ないと言っていたけど、俺は心配で仕方がない。

「っ…」

今すぐ行動出来ない自分と何も言ってくれない識が悔しくて、ギリ、と歯を噛んだ。
いつもそうだ。何も言わずに気がついたら居なくなっている。空気のように馴染むから、居ないことに気がつきにくい。そのくせ、また気がついたら戻って来てやがる。

「言い忘れたが…月はすでに、俺のものだ」

月という言葉にみんなは訳が分からないといった表情をする。けれど、識個人か二人の関係を知ってる奴らは直ぐに分かる。
井上を太陽とするなら、必然的に識は月だ。

「まさかっ…!!」

俺のもの、という言葉に腹の中でどろどろとした黒いものが溜まっていくような感じがした。
多分、きっと俺は識の事が好きなんだと思う。
俺の気持ちに勘ずいているのか、去り際、アイツは確かに俺を見て僅かに口角を上げた。













愛情と憎悪と殺意と情欲












(二人は必ず)(俺が助け出す)

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