僕らの終焉紀行 | ナノ
憎悪と
深夜に、ふと目が覚めた。
「…誰か、いた…?」
霊圧の名残は感じない。けれど、確かに誰かがいたような気がする。
「もしかして、ひめ、ちゃん…?」
口からこぼれ出た名前に、即座に否定する。
あり得ない。だって彼女は進んで僕の方に近寄っては来ない。それに、そもそも物理的に不可能だ。
「まさか、ね…」
ないない。そう思いつつも、気がつけば携帯に手は伸び、電話帳を開いていた。
あの子の携帯番号は知らないから、誰かに適当な理由で連絡してもらおう。
まず、無難なたつきちゃんは勘が良すぎるから却下。千鶴ちゃんはまず電話番号知らない。だとしたら、一護か。
「…電話じゃなくて、メールの方がいいかな」
発信しますか?と表示された画面が新規メールに変わる。
「数学のプリントが、僕のと、織姫ちゃんの、間違えて返ってきてないか、聞いてみてもらっても、いいかな…と」
一度文面を確認してから、送信ボタンのところに指を持って行く。
「……」
今更ながら、押すか押さないか迷ってきた。
現時刻は夜中の一時過ぎだ。今送っても、返事はどうせ明日になる。
「明日でも、大丈夫だよね…?」
明日、昼になる前にメールを送ろう。多分、大丈夫だから。
何が大丈夫なのかよく分からないまま、携帯を閉じてベッドに横になった。
愛情と憎悪と殺意と情欲
(そんなに言う程、今は嫌いではない)(幼かったからと割り切れる程度には余裕も出来た)(だけど、)(何故か胸がざわついて仕方がない)
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