僕らの終焉紀行 | ナノ

愛情と






一人だけなら、別れを告げてもいいと言われた。
そう言われて、真っ先に思い浮かんだのは彼だった。

「…識、くん」

黒崎君の様子を見に行ってから、よく見かけてた彼のバイト先に行ってみた。最近改築した大きな書店。そこから後を追って、着いた先が自分と同じマンションだったのには驚いた。多分、識くんもまだ気付いてないと思う。
でも、有名な訳あり部屋だったのには妙に納得してしまった。識くんは、昔からそういうの気にしたりしなかったから。
くす、と小さく笑いながら、顔にかかった髪をそっと払う。
まだ、どこか幼い寝顔。

「…識くん」

いくら双子とは言え、十年以上も離れて暮らしていたらもう他人に近い。それなのに、嫌われてるなら近付かなければいいが、唯一出来なかった。
黒崎君に対するモノとよく似てるけれど、全く違う感情。
嫌われててもいいから、近くで見ていたい。傍にいたい。視界に入っていたい。

「でもね、叶うなら、あなたに愛されたかった」

この間見た、頭を撫でていた女の子のように。

「…あのね、識くん。私、本当はもっと前から識くんが何処にいるか知ってたの」

お父さんとお母さんが死んだと知らされてから、お兄ちゃんや親戚のおばさん達が識くんを引き取れないか色々調べてくれてたんだよ。
でも、すぐに識くんは行方不明になっちゃって、預けられてた孤児院も経営破綻して閉鎖されて、捜すに捜せなくなってしまった。

「今更こんな事言ったって、言い訳にしかならないけどね」

俯くと、揺れた自分の髪が目に映る。同じだけど、少しだけ淡い色をしてる識くんの髪が羨ましかった。

「…私ね、初めて好きな人が出来たんだよ」

もしも五回生まれ変わったとしたら、五回とも同じ人を好きになるくらい。

「だけどね、私…何度生まれ変わったとしても、識くんとはまた、双子がいいなぁ…」

大好きで大切な私の半身。
怖い事も多かったし、一緒に過ごした時間も短かったけれど、私は、あの頃が一番楽しかった。











愛情と憎悪と殺意と情欲











(許さなくてもいい)(憎んでてもいい)(恨んでてもいい)(だけど、)(私の事を、)(私の存在を、)(忘れないでと願った)

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