僕らの終焉紀行 | ナノ

僕が愛した君





夕暮れの中、ゆっくりとした歩調で帰路に就いていた。
茜色の鮮やかな夕日に、思わず立ち止まる。
青が徐々に濃くなり、最後は茜色に変わるグラデーションが綺麗だ。

「識兄!!」

生温かい風に舞う髪を押さえながら懐かしい呼び名に振り返ると、腹部に衝撃が走った。

「おっと…久しぶりだね、夏梨ちゃん」

「久しぶり識兄!識兄は図書館の帰り?」

「うん。夏梨ちゃんはサッカー?」

「シュートいっぱい決めてきたよ!!」

嬉しそうに話す夏梨ちゃんに、微かに頬が緩む。

「凄いね、夏梨ちゃんは」

自分がこのくらいの時はスポーツなんかさっぱりだった気がする。

「…もう遅いから、送っていくよ」

茜色だった空は既に紺色だ。

「識兄っていつもそうやって子供扱いするよなー」

「そう?夏梨ちゃんの気のせいじゃないかな」

それに、暗い道を女の子が歩くのは危ないからね。
そう言いながら小さく笑って夏梨ちゃんの頭を軽く一撫でする。少し拗ねた表情が、照れたような表情に変わった。

「…識兄ってさー、彼女とか、作らないの?」

ネットに入ったボールを蹴りながら、夏梨ちゃんが突然聞いてきた。

「今のところ、作る予定はないかな」

別に彼女が欲しくない訳ではないけれど、水色を見てると色恋沙汰は大学生とか社会人になってからでいいと思う。いや本当に。

「ふーん。モテそうなのに勿体無い」

「ふふ、ありがとう」

嬉しいけれど、残念ながら今までに告白された回数は皆無だ。

「夏梨ちゃんこそ、誰か気になる男の子とかいないの?」

「えっ?べ、べべ別にそんな奴いるワケないじゃん!!」

そう言いながらも明らかに目が泳いでるよ夏梨ちゃん。

「ふーん、へぇ、そっかぁー」

「ちょ、ニヤニヤすんなよ識兄!!」

「ニヤニヤしてないし!…あ、ほら一心さん!一心さんいるよ夏梨ちゃん!」

「えっ…て、騙したな識兄っ!!」

バシバシと叩いてくる夏梨ちゃんを鞄で防ぎつつ、夏梨ちゃんの後ろを指差し全力ダッシュ。

「あははっ、ごめんごめん」

「全く反省する気ないだろ識兄」

じとーっとした目に苦笑しつつ、隣りを指差す。

「ほら、着いたよ夏梨ちゃん」

ぽんぽんと頭を軽く叩けば、何か言いたげに見上げてきた。

「うん?」

「…今日、家でごはん食べていきなよ」

「ごめんね、これからバイトなんだ」

早過ぎず遅過ぎないタイミングで断る。

「また、バイト?」

「一人暮らしは大変なんだよ、夏梨ちゃん」

でも、近いうちに必ずごはん食べに行くよ。と、俯いてしまった夏梨ちゃんの頭を撫でながら、ぼそりと言った。

「その時は夏梨ちゃんのオムライス食べたいな」

「…おうっ!!」










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(相変わらずの男らしい返事に)(笑みが零れた)

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