僕らの終焉紀行 | ナノ

注射器とクスリ





虚圏に行って以来、僕は藍染さん側の一員として数えられているらしい。
その証拠にちょくちょく人がやってきては色々と教えてくれたり遊んだりする。まあ主に暇人らしい市丸さんなんだけれど。
だがしかし学生の本業は遊び惚けることではない。もちろん金稼ぎでもなく、学ぶことだ。
例え夏休みに家出紛いのことをしてたとしても僕は学生であり、もちろん家庭学習として宿題というものが出ている。
普段ならそこそこ手を抜いてたりもするところだけれど、どうやら来年から成績優秀かつ生活態度の良い所謂模範的な生徒を試験毎に選抜し特待生に相応しい生徒を選びその生徒を来年から期間は不明だけれど学費を免除する特待生制度を考案中らしい。
とりあえず実施するかは分からないらしいけれど学費免除と聞いて手抜きはしないことにしたから宿題一つにも時間がかかってしょうがない。
それなのに最近になって色々と邪魔が増えた。
だから邪魔が入らない図書館に行って、勉強して帰りにバイト行ってきて疲れ果てて今から寝ようとしてるところだというのに。

「…誰?」

誰か来たらしく、風は無いのに開けっぱなしにされた窓のカーテンが揺れた。
この様子では、まず市丸さんではない。もちろん感じ慣れたウルキオラの霊圧でもない。

「誰か、いるの?」

カーテンを勢いよく開けたら、何か黒い物体が足元を通り過ぎていった。

「え、猫…?」

「にゃー」

ソファーを陣取る黒い猫。
多分、さっき足元を通り過ぎていった物体だ。
にゃあにゃあと、まるでこっちに来いと言うように鳴いている。

「上の階から逃げてきたの?」

一階でもないのにベランダから猫が現れるのはどう考えても可笑しい。

「にゃーお」

猫の隣に腰を下ろすと、甘えるようにすり寄ってきた。
顔はふてぶてしい癖に行動は結構可愛いな。

「にゃおん」

「ふふっ…くすぐったいよ」

膝の上で転がりながらごろごろと喉を鳴らす猫を撫でる。
猫の黒い毛を見ていたらふと、ウルキオラを思い出した。

「今頃何してるんだろうね、猫さん」

少し会いたくなったのを誤魔化すように膝の上で寛ぐ猫に問いかける。
そんな僕を見て、猫はにゃあ、と不思議そうに一鳴きした。











注射器とクスリ











(募る想いは雪のように降り積もり)(水飴のように甘く溶け)(クスリのように)(染み込んでいく)

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